2021-02-12
社員が泥棒するのは社長のせい
2月8日、兵庫県庁の職員が貯水槽の排水弁を閉め忘れて水道水が補給され続ける状態となり、水道代約600万円が余計にかかっていた、という事件が報道されました。
その報道の中で、男性職員が「あとのチェックは私が行う」といって業者を帰し、その結果閉め忘れが起こったこと、職員の責任を重く見て、職員個人に賠償を求めたことも伝えられました。
個人的には、個人に賠償を求めたことに違和感があります。
なぜなら、私は薬局経営者として駆け出しのころに、大先輩から「社員が泥棒するのは社長のせい」と教えられていたからです。
当時、薬局では職員が医薬品を盗むなどの事件が全国的に増えていて、問題になっていました。
当然、経営者は怒るわけですが、その大先輩は「盗めるようなシステムやチェック体制になっていることの方が問題。人間は魔が差すこともある。盗めないような万全なチェック体制していれば、そんな問題は起きない。それなのに、経営者が怠慢から盗める状態になっていて、魔が差した社員が盗んだのなら、経営者が社員を泥棒にしたのと同じだ」と言っていました。
社員に犯罪を犯させたのは、経営者のせいだというわけです。
逆に言えば、薬を盗めない厳重なチェック体制を作ることは、社員をまもることでもある、ということですね。
同じことがこの事件にも言えるのではないでしょうか?
「なぜ男性職員は本来行うべき手順を守らず、業者を帰したのか」
「バルブの閉め忘れを防ぐ体制は存在したのか」
「定期的にチェックする体制はなかったのか」
「上司への報告体制はどうなっていたのか」
などなど、不明な点が多々あります。
ひょっとしたら、組織や組織の長の責任に帰すべき点があるかもしれません。
その検証が行われないまま、短絡的に職員に賠償を求めたのなら、これこそ問題でしょう。
損害を被るような事態が起こった時、真っ先に「自分が社員を泥棒にしたのではないか?」と考え、改善すべき点を探すのが、組織の長の務めではないでしょうか?
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