診断なくして治療なし──良い経営は「正しい現状把握」から

あなたは自社の借入額と返済額を、自信をもって答えられますか。
経営改善のご支援をしていると、自社の現状を把握できていない経営者が多いことに驚きます。
「診断なくして治療なし」
医療業界にいたら、必ず耳にする言葉ですよね。
しっかり検査をし、現状把握をして正しい診断をしなければ、適切な治療ができません。
適切な診断のためには血液検査や画像検査などのデータが不可欠です。
それと同じく、経営状態を正しく把握できていなければ、適切な経営は困難です。
数字を把握しないまま経営判断をするのは、検査をせずに行き当たりばったりで治療をするのと同じ。
良い経営を目指すなら、まずはしっかりした現状把握から始めましょう。
現状把握のために最も重要なことは「整理整頓」です。
数字を把握していない経営者は少なくない
経営者と打ち合わせに当たって、最初は基本的な情報を確認します。
特に借入額や月々の返済額は重要なので、必ず数字が分かる資料を出していただくようにお願いします。
次回面談時までにご用意ください、みたいな感じで。
ところが、50%~70%くらいの経営者は「書類が見つからなかった」といって用意していないんです。
決算書を見れば借入金の額は分かりますが、決算日から一定期間が経っていると借入の状況が変わっているかもしれません。
なので私は必ず最近の借り入れ状況を確認しています。
が、状況が分からないことが少なくないのです。
直近1年くらいの事例を振り返ってみると、7割以上が自社の借入の状況を把握できていないのです。
なんとか借入金の情報を集めてもらい、借入金額や返済額の一覧表を作成すると「こんなに返済しなきゃいけないの?」なんて驚く経営者もいるくらいです。
「現状を知らない経営」の結末
Aサロンでは、経営改善のため、苦心して当面の資金繰りの手当てをしていました。
ところがそんなさなかに、経営者自身も忘れていた借入の一括返済期限が近いことが発覚。
個人事業だったこともあり、すべての借入金が決算書に記載されていなかったのです。
経営者自身も借り入れていたことを忘れていたため、誰も返済期限を把握できていませんでした。
この時は何とか借換で対処できたものの、かなり肝を冷やしました。
B 飲食店は、返済額を把握しないまま、目標利益の設定もせずに感覚的に値上げを行っていました。
原価上昇には対応できたものの、返済額には全く足りておらず、資金繰りが困窮。
急遽借入金の返済停止を実施することになりました。
C サロンは、借入に借入を重ねており、気づけば年商の倍以上の負債を抱えていました。
利息だけでも月の粗利を圧迫。
身動きが取れなくなっていました。
どのケースも、経営者が借入額や返済額をしっかり把握していなかったという共通点があります。
借入金額や返済額など、それほど把握が難しくない経営数値ですら把握していなければ、安定した経営は難しいでしょう。
なぜ現状を把握できないのか?
現状把握できていない経営者には、いくつか共通点があるように思えます。
●記帳や経理を税理士に任せきり
●通帳や口座が散らばり全体像を把握しづらい
●個人と法人の借入が混在している。
●損益計算書しか見ていない
●月次試算表を作成していない
●そもそも書類が整理されていない
書類や情報の整理整頓ができておらず、数値を把握しにくくなっていることが多いですね。
そのため、適切な経営判断が出来ず、経営が困難になっているのかもしれません。
まずは情報の整理整頓を
日々の経営をする上で、数字のチェックは重要です。
そのためには情報を整理整頓しておく必要があります。
手始めに、机の上の整理から始めましょう。
契約書や返済予定表を集め、最新のものをファイリングして、整理しておきましょう。
また、記帳は数か月分まとめて行うのではなく、日々行いましょう。
少なくとも月次の経営状況が分かる状態でなければ適時適切な手を打つことはできません。
もし
●売上、粗利率、借入金残高、月々の返済額をすぐに答えられない
●必要な書類がすぐ取り出せるところにない
という自覚があれば、整理整頓から始めましょう。
やっぱり「診断なくして治療なし」
今は回っているから大丈夫と思っていても、調剤報酬改訂や賃上げ、医療システムの変化が起きれば、一気に資金繰りが悪化する可能性があります。
いち早く手を打つためにも、常に経営の現状を正しく、素早く把握しておくことが重要です。
まずは書類の整理整頓からはじめましょう。
それが良い経営への第一歩になります。
私たちは調剤薬局経営の無料相談を承っています。
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