2026-08-06

高額薬が増えた薬局ほど要注意。売上回復の裏で資金繰りが苦しくなる仕組み

高い薬が出て売上は回復傾向。それでも資金繰りが苦しくなるかもしれない理由

ある薬局の経営相談を依頼されたときのことです。その薬局について、金融機関の方は「高い薬が出るようになって、売上は回復傾向にある」と、良い傾向として見ていらっしゃるようでした。

売上が戻ってきているというのは、たしかに明るい話ですよね。ただ、私はそのとき「そうとは限らないな」と思いました。

売上が伸びているからといって、キャッシュフローまで良くなっているとは限りません。むしろ、高額な薬が増えたことで、資金繰りを圧迫している可能性もあります。

実際、以前ある薬局で、高額な薬が出るようになったことでかえってキャッシュが苦しくなり、経営が困難になってしまった事例も見てきました。

だからこそ、「高い薬が出て売上が伸びている」と聞いても、手放しでは喜べなかったのです。

こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。薬局経営の現場を経験したのち、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。

今回は、高額薬と資金繰りの関係について、注意しておきたいポイントを3つに分けてお伝えします。

「うちも最近、高い薬が増えてきたな」という薬局経営者の方は、ぜひ自店に当てはめながら読んでみてください。

この記事を読むとわかること

・売上が伸びていても、キャッシュフローが良くなるとは限らない理由
・高額薬が資金繰りに与える3つの影響
・「増加運転資金」という視点と、まず何から確認すべきか

売上が増えれば、利益も増えるはず?

まず注意したいのが、売上と利益の関係です。

高額薬が出るようになると処方箋単価が上がるので、売上の数字はたしかに大きくなります。ただ、このとき増えているのは主に薬剤料の部分です。

では、売上が増えた分だけ利益も増えるのかというと、そういうわけではありません。

高い薬が出て売上が大きく伸びても、利益まで同じように伸びるとは限りません。売上の数字だけを見ると良くなっているように見えても、実際に手元に残るお金はそれほど変わっていない、ということもあります。

冒頭の金融機関の方のように、「売上が回復している」という情報だけを見れば、経営が上向いているように見えるかもしれません。

ただ、売上の回復が、そのまま経営の回復とは限らないのです。

入金と支払いのズレに、高額薬の支払いが直撃する

次に注意したいのが、お金の出入りのタイミングです。

調剤報酬のうち、保険請求分が入金されるのは、調剤した月からおおむね2か月後です。月末で締めて翌月10日までにレセプト請求し、入金は翌々月の20日前後になります。

一方で、薬の仕入れ代金の支払いがそれより先に来る場合、お金は先に出ていき、後から入ってくることになります。

普段の薬であれば、このズレを何とか吸収できているかもしれません。ところが、高額薬になると1件あたりの金額が大きいため、数件の処方があっただけでも支払額が大きく変わってきます。

その支払いが、たまたま手元資金の少ない時期に重なったらどうでしょうか。

たとえば、ボーナスを支払った直後や納税の直後です。そうした時期に高額薬の仕入れ代金の支払いがまとまって来ると、一気に資金繰りが苦しくなることがあります。場合によっては、資金ショートにつながる可能性もあります。

高い薬が出るようになるということは、それだけ入金と支払いのタイミングのズレが、資金繰りに与える影響も大きくなるということです。

伸びているときほど、必要な運転資金は増えていく

そして、今回いちばんお伝えしたいのが「増加運転資金」の話です。

高額薬の応需が増えたり、処方箋枚数が増えたりすると、それに伴って仕入れの支払額も増えていきます。在庫として持つ薬が増えれば、その分だけ在庫に回るお金も増えていきます。

ところが、売上代金が入ってくるのは後です。

つまり、仕入れや在庫にかかるお金を先に支払い、その後に入金を待つという状態になっていると、売上が伸びるほど先に必要になるお金も増えていきます。

このように、売上の増加に伴って新たに必要になる運転資金を「増加運転資金」といいます。

「売上は伸びているのに、なぜか手元のお金が減っていく」

そんなときに考えられる要因の一つが、この増加運転資金です。

手元にある資金が、増えていく運転資金に追いつかなくなると、利益は出ているのにお金が足りない、という状態になることがあります。

ここで特に気をつけたいのが在庫です。

在庫は、お金が形を変えたものです。棚に積まれた薬で、家賃や人件費を払うことはできませんよね。

高額薬の在庫が増えてキャッシュが減っているところに、先ほどお話しした入金と支払いのズレが重なると、「利益は出ているはずなのに、支払うお金が足りない」ということが実際に起こり得ます。

私自身、薬局を経営していた頃、肝炎の薬など、かなり高額な薬を扱っていた経験があります。

百万円規模の薬になると、1件分を在庫として抱えるだけでも、資金繰りへの影響は相当なものです。だからこそ、そうした薬は在庫として持たず、処方が出てから発注する受発注での対応にしていました。

そこまで高額な薬でなくても、数万円、十数万円、数十万円といった薬が何件も重なれば、資金繰りはじわじわときつくなっていきます。

程度の差こそあれ、多くの薬局さんが経験したことのある話ではないでしょうか。

まずは、資金繰り実績表でお金の動きを見てみる

売上の数字だけを見ていると、ここまでお話ししたようなお金の動きには、なかなか気づけません。

損益計算書に出てくる利益と、実際の手元のお金は、必ずしも同じように動くわけではないからです。

「売上は増えているのに、なぜかお金が減っている」

もしそう感じることがあれば、一度「増加運転資金」という視点で見てみてください。

高い薬が増えている。処方箋が増えている。在庫が膨らんでいる。

こうしたことに心当たりがあるなら、一度、資金繰りを確認しておいたほうがいいかもしれません。

最初の一歩としておすすめしたいのは、資金繰り実績表を作って、実際のお金の動きを確認することです。

いつ、どれだけお金が出ていって、いつ、どれだけ入ってきているのか。

これが見えるようになるだけでも、支払いが重なって資金が苦しくなりやすい時期や、早めに手を打ったほうがいいポイントが見えてきます。

「自店の資金繰り、大丈夫かな」と気になった方は、無料相談もご利用いただけます。

お金の流れを一緒に確認しながら、根拠を持って経営判断ができる状態をつくるお手伝いをします。お気軽にご相談ください。

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