薬局の手元資金は固定費で考える。最低3か月・理想6か月という安心ライン

手元にいくらお金を残しておけば、安心して薬局を経営できるのか。
薬局を経営している方であれば、一度は考えたことのあるテーマではないでしょうか。
手元資金の目安として、よく「月商の何か月分」という言い方を耳にします。しかし、薬局で実際に計算してみると、かなり大きな金額になり、「本当にそこまで必要なのだろうか」と感じる方も多いと思います。
こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。薬局経営の現場を経験したのち、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。
以前、このブログで「現預金は月商の何か月分くらい必要なのか」というテーマを取り上げました。
今回はそこからもう一歩進めて、最近私がしっくりきている「固定費を基準に考える」という方法をご紹介します。
この記事を読み終えるころには、自分の薬局にどのくらいの手元資金があればよいのか、一つの目安が見えてくると思います。
この記事を読むとわかること
・薬局の手元資金を「月商」で考えると、金額が大きくなりやすい理由
・手元資金を「固定費」で考える方法
・固定費の3か月分から6か月分を目安とする考え方
私は最近、「固定費で考える」ほうがしっくりきています
手元資金の目安として、一般的によく使われるのが「月商の何か月分」という考え方です。
1か月の売上高を基準に、月商の2か月分や3か月分の現預金を持っておきましょう、というものです。計算が簡単なので、一つの目安として広く使われています。
ただ、万が一に備え、生存率を高めるという意味では、固定費を基準に考える方が、最近しっくりきています。
固定費とは、売上があってもなくても、毎月支払いが発生するお金です。
例えば、人件費、家賃、光熱費、リース料、借入金の利息などが挙げられます。決算書でいえば、販売費及び一般管理費と支払利息のあたりです。
月商が「薬代を含んだ大きな数字」であるのに対し、固定費は、薬局を維持するために毎月必要となるお金です。
手元資金がどのくらい必要なのかを考えるのであれば、月商よりも固定費を基準にしたほうが、薬局の実態に合っていると私は感じています。
もちろん、月商を基準にする方法が間違っているわけではありません。
ただ、万が一の事態に備えるという意味では、「売上や入金が止まったときに、固定費を何か月支払えるか」と考えたほうが分かりやすいのではないでしょうか。
コロナ禍のような事態を経験した今、私はそのように考えるようになりました。
手元資金は、「入金が止まったとき」に耐えるために必要です
そもそも、なぜ手元にお金を置いておく必要があるのでしょうか。
薬局は、レセプトを請求してから実際に入金されるまで、おおむね2か月かかります。
ただし、通常どおり営業を続けていれば、2か月前に請求した分が順番に入金されるため、毎月の入金が突然なくなるわけではありません。
問題になるのは、その流れが止まったときです。
例えば、災害によって店舗を閉めざるを得なくなったり、感染症の影響で来局者が大きく減ったりすることが考えられます。
売上や入金が減っても、人件費や家賃、リース料などの固定費の支払いは待ってくれません。
このとき、手元に十分なお金がなければ、短期間で資金繰りが苦しくなってしまいます。
つまり手元資金は、入金が止まったとしても、しばらくの間は固定費を支払いながら事業を続けるための備えです。
そう考えると、手元資金の目安を固定費で考えるのは、自然なことではないでしょうか。
実は私も、入金が止まりかけた経験があります
ここで、私自身の失敗談を少しお話しします。
薬局の店長をしていたころ、レセプトのオンライン請求でミスをしたことがあります。
オンライン請求では、本送信の前にテスト送信を行います。私はそのテスト送信を本送信だと思い込み、実際の請求データを送信できていませんでした。
気づいたのは、請求期限を過ぎたあとです。
国保連から「今月分の請求データが届いていません」と連絡があり、慌ててデータをフロッピーディスクに保存して持ち込み、何とか対応してもらいました。
今となっては笑い話ですが、もし連絡をもらえなかったり、期限後の対応をしてもらえなかったりしたら、入金が丸ごと1か月遅れていた可能性があります。
たった一度の確認漏れでも、まとまった金額の入金が止まりかけることがあります。
そのようなときに、手元資金に余裕があるかどうかで、慌てずに対応できるかどうかが変わってくるのです。
いくら持っておけばよいのか。最低3か月、できれば6か月です
では、固定費の何か月分を持っておけばよいのでしょうか。
私がお勧めしているのは、最低でも固定費の3か月分、できれば6か月分です。
計算は簡単です。毎月の固定費に、3または6を掛けるだけです。
例えば、毎月の固定費が500万円であれば、3か月分は1,500万円、6か月分は3,000万円です。
現在の現預金残高を毎月の固定費で割れば、自分の薬局が固定費の何か月分を持っているのかも分かります。
固定費の3か月分があれば、売上や入金が止まったとしても、すぐに資金がなくなることはありません。その間に必要な対策を考える時間を確保できます。
6か月分あれば、コロナ禍のように影響が長引く事態でも、より落ち着いて対応しやすくなります。
なお、毎月の借入金返済がある場合は、その分を上乗せして考えておくと、より安心です。売上が減っても、借入金の返済は続くためです。
ただし、現金は多ければ多いほどよい、というものでもありません。
現金を貯め込むことばかりを優先し、必要な設備投資や人材育成にお金を使わなければ、薬局の成長につながりません。
固定費の3か月分から6か月分というのは、あくまで安心して経営するための一つの目安です。
薬局の規模や借入金の状況、今後の投資予定などに合わせて考えていただければと思います。
固定費の3か月分に届いていないと感じたら
実際に計算してみて、「固定費の3か月分にも届いていない」という場合は、早めに対策を考えたほうがよいサインです。
まずは、利益を積み上げて、自力で手元資金を増やしていくことを考えましょう。
売上や粗利益、経費を見直し、無駄な支出を減らしながら、少しずつ現金を増やしていきます。
ただし、薬局の利益率はそれほど高くありません。利益だけで手元資金を一気に増やすのは、現実的には簡単ではありません。
大きな改善を一度に目指すのではなく、毎月少しずつ積み上げていく必要があります。
毎月、現預金の残高を見る習慣をつけましょう
最後に、最もシンプルで効果のある習慣をお伝えします。
月に一度でよいので、現預金の残高を確認してください。
その際は、次の三つを見ておきましょう。
・今、現預金がいくらあるのか
・固定費の何か月分に当たるのか
・来月以降に大きな支払いの予定がないか
この三つを確認するだけでも、今後の資金繰りはずいぶん見通しやすくなります。
「今のところ何となく大丈夫だろう」という感覚だけで経営していると、気づかないうちに現金が減っていることがあります。
そして、現金は一度減り始めると、思っている以上の速さで減っていくことがあります。
数字を見て、自分の薬局が今どのような状態にあるのかを把握しておくことが、いざというときに薬局を守ることにつながります。
まとめ
薬局の手元資金を考えるときは、月商ではなく、固定費を基準にする方法があります。
目安としては、最低でも固定費の3か月分、できれば6か月分。毎月の借入金返済がある場合は、その分も上乗せして考えます。
もちろん、これはすべての薬局に共通する絶対的な基準ではありません。
薬局の規模や借入状況、今後の投資予定などに合わせて、自分の薬局に必要な金額を考えることが大切です。
会社は、赤字になったからといって、すぐに倒産するわけではありません。一方で、利益が出ていても、支払いに必要なお金がなくなれば、事業を続けることはできません。
だからこそ、手元の現金に目を配っておく必要があります。
地域医療を支える薬局を長く続けていくためにも、自分の薬局には固定費の何か月分の現預金があるのか、一度確認してみてはいかがでしょうか。
「自分の薬局に固定費の何か月分の現預金があるのか、一緒に確認してほしい」「今後の資金繰りに少し不安がある」という方は、無料相談をご利用ください。
現在の数字と今後のお金の流れを一緒に整理しながら、安心して経営に向き合える状態をつくっていきましょう。
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