節税と返済、両方のバランスをどう取るか。薬局経営者のための考え方

「税金を払いたくない」という気持ちが、行きすぎていませんか
「できるだけ税金を払いたくない」。経営者であれば、そう思うのは自然なことです。苦労して生み出した利益から税金を納めるのですから、正直なところ、あまりうれしい話ではありません。
ただし、税金を減らすことばかりを優先すると、資金繰りや金融機関との関係に思わぬ影響が出ることがあります。
今回は、節税を考えるうえで忘れてはいけない「返済の元手」と「会社に残るお金」についてお話しします。
こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。薬局経営の現場を経験した後、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。
節税そのものが悪いわけではありません。しかし、その方法によっては、借入金の返済に使うお金が減ったり、金融機関からの評価に影響したりすることがあります。
この記事では、節税に取り組む前に、どのような点を確認しておくべきかを整理します。
この記事を読むとわかること
・会社からお金が出ていく節税が、返済に与える影響
・金融機関が過度な節税を不安に感じる理由
・節税前に確認したい「簡易キャッシュフロー」の考え方
税金をできるだけ払いたくない経営者は多い
経営相談をしていると、「できるだけ税金を払いたくない」と考えている経営者にお会いすることがあります。
経営が順調な会社に限った話ではありません。経営改善に取り組んでいる会社や、資金繰りが少し厳しくなっている会社でも、同じように節税を重視している場合があります。
利益が出れば、その分だけ税金がかかります。それなら利益を抑えて、税額を減らしたいと考えるのは自然なことです。
実際に、税理士さんと相談しながら、さまざまな対策を講じている会社も少なくありません。事業に必要な支出を適切な範囲で行うのであれば、特に問題はありません。
注意したいのは、税金を減らすこと自体が目的になってしまった場合です。
会社からお金が出ていく節税には注意が必要です
ひと口に節税といっても、方法はさまざまです。その中でも特に注意したいのが、会社から実際にお金が出ていく節税です。
例えば、節税効果があるとされる共済や保険に多額の資金を投入する。あるいは、利益が残りそうだからと、必要性を十分に検討しないまま設備投資を前倒しする。設備投資は、購入した金額の全額がその期の費用になるとは限りませんが、購入時には会社からお金が出ていきます。
こうした対策によって税額を抑えられる場合があっても、その分だけ会社の預金は減ります。
借入金の返済は、基本的に税金を支払った後に会社へ残るお金から行います。節税によって利益と手元資金を減らしすぎると、いざ返済する段階になって、必要なお金が足りなくなる可能性があります。
税金を減らすことに集中するあまり、返済に必要な資金まで減らしてしまっては、本末転倒です。
会社にお金が残っていなければ、金融機関も不安になります
もうひとつ忘れてはいけないのが、金融機関の視点です。
金融機関は決算書などを通じて、「この会社は今後も借入金を返済できるか」を確認しています。
返済能力を判断するうえでは、会社がどれだけ利益を生み出し、返済に回せるお金を確保できているかが重要になります。
節税によって利益が大きく減り、会社にも十分なお金が残っていなければ、金融機関は返済力に不安を感じます。
私自身、金融機関から「あの会社は節税にかなり力を入れているようだが、返済は大丈夫だろうか」と相談を受けたことがあります。
金融機関に返済力を不安視されると、その後の融資や資金繰りの相談が進めにくくなることがあります。
目先の税金を減らせたとしても、今後の融資に悪い影響が出てしまえば、会社にとって必ずしも得とはいえません。節税を考える際には、金融機関からどのように見えるかという視点も必要です。
その支出は、本当に会社の役に立っていますか
さらに考えておきたいのが、節税のために使ったお金が、実際に会社の役に立っているかどうかです。
税金を払いたくないという理由だけで、効果が見込めない広告を出したり、必要性の低い設備や備品を購入したりすることがあります。
こうした支出も、費用になれば税金を減らす効果はあります。しかし、事業に役立たなければ、会社にとっては単なる無駄遣いです。
税金を納めた場合、お金の一部は税金として出ていきますが、残りは会社に残ります。一方で、必要のないものにお金を使えば、その支出額はそのまま会社からなくなります。しかも、事業上の効果がなければ、新たな利益も生みません。
それなら、必要な税金を納めたうえで、残ったお金を会社に置いておくほうがよい場合もあります。
節税を意識するあまり、かえって無駄な支出を増やしてしまっては、会社のためになりません。
節税を考えるときは、簡易キャッシュフローも確認する
では、節税に取り組む際には、何を確認すればよいのでしょうか。
ひとつの目安になるのが、「借入金を返済するためのお金がきちんと確保できているか」という視点です。
この返済の元手を大まかに把握するために使われるのが、簡易キャッシュフローという考え方です。
簡易キャッシュフローは、一般的には次のように計算します。
税引き後利益+減価償却費
減価償却費は、決算書上は費用として計上されますが、その期に同じ金額のお金が出ていくわけではありません。そのため、税引き後利益に減価償却費を足し戻すことで、会社が返済に回せるお金のおおよその目安を確認できます。
節税対策を検討するときは、対策後も簡易キャッシュフローが十分に残るのか、年間の返済額を賄えるのかを確認してみてください。
もちろん、簡易キャッシュフローだけで実際の資金繰りをすべて判断できるわけではありません。しかし、節税によって返済の元手まで減らしていないかを確認するための、ひとつの目安にはなります。
税金をできるだけ抑えたいという気持ちは、私にもよくわかります。ただし、返済に必要なお金を確保し、会社に資金を残すことも同じくらい重要です。
節税額だけを見るのではなく、手元資金や返済額とのバランスを考えながら判断することが大切です。
判断に迷ったときは、資金繰りの視点も含めて相談を
節税については、税理士さんに相談しながら進めるのが一般的です。
ただし、税金を抑えることと、会社にお金を残して借入金の返済に備えることが、必ずしも同じ方向になるとは限りません。
節税と資金繰りのバランスに迷ったときは、税額だけでなく、今後の返済や資金繰り、金融機関との関係も含めて検討する必要があります。
現在の利益、手元資金、年間返済額などを数字で整理するだけでも、どこまで節税に資金を使えるのかが判断しやすくなります。
自社だけでは判断が難しい場合は、税理士さんに加えて、資金繰りや金融機関対応の視点を持つ専門家にも相談してみてください。
私たちでよければ、無料相談で一緒に数字を整理します。お気軽にご相談ください。
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