手元資金が月商1か月を切ったら要注意。薬局経営で早く相談した方がいい理由

この記事を読むとわかること
- 薬局経営で「まだ大丈夫」が危険なサインになるとき
- 資金繰りで注意したい二つの警戒サイン
- 早く相談するほど、経営を立て直すための選択肢を残せる理由
「来月、もう少し処方箋枚数が戻れば何とかなる」
「広域の処方箋がもう少し増えれば、資金繰りも楽になる」
「今月さえ乗り切れば、その先は何とかなるだろう」
薬局の経営が苦しくなってきたとき、こんなふうに考えることはないでしょうか。
経営者ですから、簡単に諦めるわけにはいきません。何とか売上を上げよう、もう少し頑張って乗り切ろうと考えるのは当然です。
ただ、経営改善のご支援をしてきて、私が強く感じていることがあります。
「まだいける」と思っているうちに、一度立ち止まったほうがいい。
こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅﨑です。薬局を運営した経験をもとに、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。
今回お伝えしたいのは、「もうダメだと思ったら相談してください」という話ではありません。
むしろ、
「このままで本当に大丈夫かな」
「半年後の資金繰りが少し心配だ」
「最近、以前より預金が減っているな」
そう感じ始めた段階で、一度きちんと現状を確認してほしいのです。
なぜなら、経営改善にはお金だけでなく、時間が必要だからです。
「まだいける」が危険になるとき
「来月はもう少し処方箋枚数が増えるだろう」
「広域処方箋がもう少し取れれば何とかなる」
そう考えること自体が悪いわけではありません。
実際に処方箋枚数が戻り、業績が改善することもあります。
問題は、まだ起きていないことが実現しなければ、今後の支払いが回らない状態になっていることです。
「来月もう少し頑張って売上を上げれば何とかなる」
そう口にしている自分に気づいたら、一度考えてみてください。
その「何とかなる」の根拠は、すでに見えている数字でしょうか。
それとも、まだ実現していない未来への期待でしょうか。
希望を持つことが悪いのではありません。
ただ、資金繰りまで希望的観測に頼り始めているのであれば、それは一つの警戒サインだと私は考えています。
相談が遅れるほど失うのは「お金」だけではない
資金繰りが悪化すれば、当然、手元のお金は減っていきます。
しかし、経営改善の現場にいると、本当に厳しいのはそれだけではないと感じます。
立て直すための時間までなくなっていくからです。
経営改善を始めるときには、まず現状を調べます。
処方箋枚数や技術料はどう変化しているのか。
人件費は売上規模に合っているのか。
在庫や仕入れに問題はないか。
どの経費を減らせるのか。
借入金の返済負担はどの程度なのか。
こうした数字を確認して課題を見つけ、それぞれに改善策を考え、計画に落とし込んでいきます。
金融機関から支援を受ける必要があれば、その計画を説明して調整する時間も必要です。
今日相談して、明日すべて解決するわけではありません。
福岡県中小企業活性化協議会でも、再生計画策定支援へ進む目安の一つとして、「再生計画策定期間中の資金繰りに問題がない」ことを挙げています。
さらに、福岡商工会議所が主催し、同協議会の統括責任者補佐が講師を務めた2025年のセミナーでは、「融資返済の調整には資金ショートの6か月前の着手が必要」と案内されています。
これは全国一律に「6か月なければ支援できない」という制度上の基準ではありません。
ただ、経営改善や金融調整には、それだけ早くから動く必要があるということです。
改善策が見つかっても、それを実行するまで会社が持たなければ支援はできません。
だからこそ、資金が残っているうちに動く必要があります。
薬局経営で見てほしい、二つの警戒サイン
では、どの段階で動けばいいのでしょうか。
一番よいのは、資金繰り表で今後の現預金残高を見ることです。
3か月後、6か月後にいくら残るのか。
仕入れ、給与、賞与、税金、借入金返済などを入れたうえで、資金が持つのかを確認します。
ただ、実際には資金繰り表を作っていない薬局も少なくありません。
そこで、分かりやすい一つ目の警戒サインとして、私は、
手元の現預金が月商1か月分を切ったら、一度きちんと資金繰りを確認する
ことをお勧めしています。
中小機構のJ-Net21でも、中小企業のキャッシュポジションについて、最低でも月商1~2か月分、できれば3か月分が望ましいとしています。
もちろん、「月商1か月を切ったら倒産する」という話ではありません。
特に調剤薬局は、売上の中に薬剤料が大きく含まれます。月商だけで安全性を判断することはできません。
あくまで、「詳しく確認を始める警戒ライン」です。
そして二つ目が、先ほどの自分の言葉です。
「来月頑張れば何とかなる」
「処方箋枚数が戻れば大丈夫」
「広域処方箋が増えれば何とかなる」
そんな不確実な希望的観測を口にしている自分に気づいたら、現預金が月商1か月以上あったとしても、一度立ち止まってください。
資金繰りの根拠が数字から期待に変わっていないかを確認するタイミングです。
薬局の資金繰りは、薬局の事情を踏まえて見る必要がある
「それなら自分で資金繰り表を作ってみよう」と思われる方もいるでしょう。
もちろん、それができればいいと思います。
ただ、これまで数字を見る習慣がなかった場合、実態を反映した資金繰り表を作るのは簡単ではありません。
特に薬局には、薬局特有のお金の動きがあります。
薬価改定があります。
医薬品卸との価格交渉があります。
高額な医薬品の処方が増えれば、売上は増えていても、仕入代金の負担によって手元資金が減ることがあります。
さらに税金、労働保険料、夏の賞与など、まとまった支払いが重なる時期もあります。
年間では利益が出る計画になっていても、途中で資金が足りなくなることはあり得ます。
だからこそ、「何となく大丈夫だろう」ではなく、薬局の実際のお金の動きを踏まえて確認する必要があります。
資金が尽きる直前まで待つと、家族まで巻き込むことがある
ここは少し厳しい話ですが、あえて書いておきたいと思います。
相談が遅れ、会社のお金がほとんどなくなると、会社だけの問題では済まなくなることがあります。
私は経営支援の現場で、経営者が個人資産を会社へ入れるケースを何度も見てきました。
さらに家族から資金を出してもらう。
学費の支払いが難しくなる。
子どもに習い事をやめてもらう。
友人や知人まで巻き込む。
そんな話を聞くこともあります。
ここまで状況が厳しくなる前に相談しておいた方が、経営改善もずっと進めやすくなります。
資金と時間に余裕があれば、状況を落ち着いて整理できますし、打てる対策も増えます。経営者自身の負担も軽くなりますし、ご家族や周囲の方を巻き込むリスクも少なくて済みます。
私自身、経営改善計画の策定に着手した後、資金が尽きて途中で支援できなくなったケースはありません。
一方で、着手前のヒアリング段階で差押えが判明し、支援を中止せざるを得なかったケースはありました。
資金も時間もなくなるほど、取れる対応は少なくなります。
だからこそ、まだ余力があるうちに相談していただく方が、結果として経営者自身にとっても、ご家族にとっても負担を小さくできると思っています。
早く相談すれば、まだ打てる手があります
ここまで読むと、不安になる方もいるかもしれません。
ただ、経営が苦しくなったら終わりだと言いたいわけではありません。
むしろ、私が伝えたいのはこちらです。
課題をきちんと把握して改善計画を作り、一つずつ対策を実行することで、経営が回復するケースも多くあります。
処方箋枚数をどう増やすのか。
広域処方箋や他院処方をどう増やすのか。
取得できる加算はないか。
今の人員配置は売上規模に合っているか。
削減できるコストはないか。
在庫や仕入れを改善できないか。
借入金の返済負担について、金融機関と調整する必要はないか。
早く動けば、こうした複数の選択肢を検討できます。
一つ試してうまくいかなければ、修正して次の手を打つこともできます。
ところが、手元資金がほとんどなくなった状態では、その時間がありません。
経営改善で大切なのは、良い改善策があるかどうかだけではありません。その改善策を実行し、効果が出るまで待てる時間が残っているかどうかです。
ここが非常に大きな違いだと、私は支援の現場で感じています。
相談するなら「経営改善」と「薬局」を分かっている人へ
では、誰に相談すればいいのでしょうか。
私は、中小企業診断士に相談するのであれば、少なくとも二つ確認したほうがいいと思っています。
一つは、経営改善計画の策定経験があること。
そしてもう一つは、
調剤薬局の経営や資金繰りを理解していることです。
中小企業診断士だからといって、誰でも同じではありません。
薬局の売上構造、調剤報酬、薬価、医薬品の仕入れ、在庫、高額薬、人員配置などを理解していなければ、現実に合った改善計画を作るのは難しいと思います。
金融機関への相談が必要なこともあります。
ただ、私がこれまで見てきた中には、会社の課題を十分整理する前に、「どうやって当面の資金をつなぐか」という話だけが先に進んでいたケースもありました。
もちろん、金融機関が悪いという話ではありません。
まず、
「なぜ資金が減っているのか」
「本業をどう改善するのか」
「どのくらい資金が必要なのか」
を整理する。
そのうえで金融機関に相談する。
状況によっては、中小企業活性化協議会などの公的支援機関につなぐ。
そうした順番で考えたほうがいいケースもあります。
「まだいける」と思っているうちに、一度確認してください
経営が苦しくなった後に、
「もっと早く相談しておけばよかった」
という言葉を聞くことがあります。
だからこそ、この記事でお伝えしたいのは、
「もうダメになったら相談してください」
ではありません。
「このままで本当に大丈夫かな」と感じた時点で、一度確認してください。
手元の現預金が月商1か月分を切ってきた。
あるいは、
「来月もう少し頑張れば何とかなる」
と、不確実な未来への期待を口にしている自分に気づいた。
それは、立ち止まる一つのタイミングです。
資金が残っていれば、考える時間があります。
時間があれば、改善策を試すことができます。
必要なら金融機関や公的支援機関とも調整できます。
資金が尽きてからではなく、打てる手と時間が残っているうちに動く。
それが、薬局を立て直す可能性を残すために、とても大切なことだと私は考えています。
資金繰りに少しでも不安を感じている方は、「まだ大丈夫」と思っている段階でも構いません。お気軽にご相談ください。
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