薬局の在庫は、お金が薬に変わったもの。発注担当者と共有したいこと

この記事を読むとわかること
- 欠品や急配を避けたい現場と、経営者が共有したいこと
- 在庫が増えすぎると、資金繰りで何が困るのか
- 必要な在庫量と発注方法を、現場と一緒に見直す考え方
患者さんに必要な薬を、その場でお渡ししたい。
欠品でご不便をおかけしたり、体調が悪い中でお待たせしたりするのは申し訳ない。
管理薬剤師さんや発注を担当する方のそうした気持ちは、よく分かります。
こんにちは、天心堂L&Cコンサルティングの梅﨑です。
私も調剤薬局の店長をしていた頃は、欠品はできるだけ避けたいと思っていました。
卸さんに負担をかける急配も、なるべくお願いしたくありませんでした。
そのため、つい在庫を多めに持ちたくなることがありました。
一方で、経営の立場から見ると、在庫が増えるのは苦しいことです。
仕入れ代金の支払いが増えるうえに、お金が在庫として眠ってしまうからです。
今回は、ある薬局のお話をもとに、患者さんへの対応と資金繰りの両方を考えながら、在庫の持ち方を現場とどう話し合うかを考えてみます。
在庫が倍近くまで増えた薬局の例
ある薬局では、高額な薬が処方されるようになったのをきっかけに、在庫が倍近くまで増え、その後も高い水準で推移していました。
高額な薬が出るようになったこと自体も、もちろん理由の一つです。
ただ、それに加えて、管理薬剤師さんや発注を担当する方の「欠品を避けたい」という思いが大きく影響していたようです。
その薬は、患者さんがすぐに必要とするものでした。
後から郵送でお届けするといった対応も難しい薬です。
しっかり在庫を置いておきたいという気持ちは、十分に理解できます。
それでも、払い出しの量から見ると、1カ月分ほどの在庫を抱えていたように思えました。
欠品を避けるためとはいえ、本当にそこまでの量が必要なのでしょうか。
薬を切らさないために在庫を持つことと、そのためにどれくらいの量が必要なのかは、分けて考える必要があります。
昔からの発注方法にも、理由がある
「昔からこのやり方で発注している」「この方法に慣れている」ということもあると思います。
そうした発注方法になったのには、理由があるのでしょう。
以前に欠品で困った経験や、患者さんへの対応を考えて決めた方法かもしれません。
ただ、薬局を取り巻く環境は刻々と変わります。
以前は問題なく続けられていた方法でも、扱う薬や払い出し量、供給状況、薬局の資金繰りが変われば、今の状況には合わなくなることがあります。
昔から続けている方法があるなら、まずはその理由を聞く。
そのうえで、今も同じ量を持つ必要があるのか、発注の仕方を変えられるところはないかを、一緒に確認してみてはいかがでしょうか。
慣れた方法を変えるのは、現場にとって負担にもなります。
在庫を減らすだけでなく、どうすれば発注や管理をしやすくなるかも、見直しの中で考えてよいと思います。
発注を判断する方に、在庫が増えると何が困るのかを知ってもらう
見直しを進めるうえで、日々の発注を誰が判断しているのかを押さえておくことも大切です。
その管理薬剤師さんや担当の方に、まず理解していただきたいことがあります。
在庫が多くなりすぎると、薬局の経営で何が困るのかということです。
余分に薬を仕入れれば、その分の代金を支払う必要があります。
支払いが増えること自体も、薬局にとって負担です。
さらに、仕入れ代金を支払った薬が棚に残っている間は、会社のお金が薬の形になって滞留しています。
そのお金を、家賃や給与などの支払いに充てることはできません。
家賃や給与を、薬で支払うことはできないからです。
お金の巡りが滞るという意味で、漢方でいう「瘀血(おけつ)」に近いかもしれません。
患者さんのために用意した薬でも、持ちすぎて棚に滞留すると、資金繰りを圧迫してしまいます。
資金繰りが行き詰まれば、薬局を続けること自体が難しくなります。
そうなれば、頼ってくださる患者さんを支えることもできません。
患者さんへの責任感から在庫を多めに持ちたくなるのは、自然なことだと思います。
私自身も、店長時代にそう感じていました。
だからこそ、経営者や経営幹部が、お金の面から見た事情も伝える必要があります。
特に規模の小さい会社では、現場とこの前提を共有することが大切だと考えています。
基本的に欠品を起こさず対応できる量を検証する
在庫とお金の関係を共有したうえで、必要な量を検証していきます。
「どれくらい持っていれば安心か」と聞くだけでは、1カ月分でも2カ月分でも、多いほどよいという話になりかねません。
確認したいのは、どれくらいの量があれば、基本的に欠品を起こさず対応できるのかということです。
薬の払い出し量や、発注してから納品されるまでの日数を確認します。
毎日のように発注でき、安定して入荷する薬なら、数日分で対応できる場合もあるでしょう。
一方、供給が不安定な薬では、多めに確保しておく必要があるかもしれません。
来局が重なることや、入荷が遅れることもあります。
納品までの日数だけで判断せず、現場が何を心配しているのか、実際にどんな場面で困るのかを聞くことが大切です。
例えば、数字の上では数日分で足りそうでも、現場からは「1週間分は置いておきたい」という声が出るかもしれません。
その場合も、すぐに多すぎると決めつけず、なぜその量が必要なのかを確認します。
なお、ここで挙げた日数はあくまで例であり、すべての薬局や薬に当てはまる基準ではありません。
同時に、薬局のお金の出入りも確認します。
仕入れ代金をいつ支払い、調剤報酬等がいつ入金されるのか。
給与や返済などの支払いも踏まえて、どこまで在庫を持てるのかを考えます。
単に「多すぎるから減らして」と伝えるのではなく、患者さんへの対応に必要な量と、資金繰りの面から持てる量をすり合わせていくのです。
決めた範囲で対応するための工夫も、一緒に考える
在庫の水準を決めても、「この範囲でやってください」と伝えるだけでは、現場は困るかもしれません。
その範囲の中で患者さんに対応するための工夫も、一緒に考える必要があります。
私自身、店長をしていた頃は、患者さんごとに来局日を見込んで薬を入れるなど、個別に管理していました。
スタッフには在庫を増やしすぎないようお願いし、発注がどうなっているかを一緒に確認することもありました。
今の発注方法で、やりにくいことや負担になっていることはないでしょうか。
以前からの方法も含めて、もっと対応しやすくなる工夫がないか、発注を判断する方と話してみてもよいと思います。
在庫が増えたままになっているなら、まずはその方に、増えすぎると何が困るのかを知っていただく。
そして、欠品への不安や発注の事情を聞きながら、必要な量と管理の仕方を見直していく。
薬局が続いてこそ、患者さんのお役に立てます。
その前提を共有しながら、現場と一緒に、今の薬局に合った在庫の持ち方を決めていただければと思います。
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