2026-05-28

スタッフが自ら動き出す薬局をつくる——経営者視点を伝えるための3つのポイント

「スタッフに経営者目線を持ってほしい」——そう感じている薬局の社長さんは、少なくないと思います。でも、どう伝えればいいのか、どこから動けばいいのか、最初の一歩を踏み出すのはちょっと勇気がいりますよね。

こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。薬局経営の現場を経験したのち、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。

私自身も調剤薬局を経営していた時には、管理薬剤師や事務スタッフに経営者視点を持ってほしいと思っていました。でも、これがなかなか難しいんですよね。今回は、その課題に向き合うための考え方と、私自身が経験してきたことをお伝えします。

この記事を読むとわかること

・社長とスタッフの間に意識のずれが生まれる根本的な理由
・「家計の話」を入口にすると自分ごとになる
・意識改革を進めるときにあらかじめ知っておきたいこと

なぜ、社長とスタッフの間にギャップが生まれるのか

社長とスタッフの間には、明確な危機感や意識のギャップがあります。なぜなら、見えているものも、負っている責任も、根本的に違うからです。

薬局の社長が背負っている責任は、薬局の存続です。薬局が存続することが、患者さんへの医療提供を続けること、医療機関との関係を守ること、従業員の生活を維持すること、金融機関や医薬品卸などの利害関係者を守ることにつながります。だからこそ、仕入れ代金をきちんと払い、金融機関への返済を続け、事業を長く存続させなければなりません。売上や利益、お金に対してシビアにならざるを得ない立場なのです。

一方、スタッフの方が最優先にするのは家族の生活です。きちんと働いてお給料をいただき、家族が暮らしていく。それが、責任の中心にあります。

どちらが正しくて、どちらが間違いということではありません。見ているものが、負っている責任の範囲が、そもそも違うのです。だからこそ、経営者からすると危機感のずれや意識のギャップがあるように感じてしまいます。

では、どうすればスタッフの方に薬局のお金の流れを自分ごとにしてもらえるのでしょうか。

「家計の話」から入ると、薬局のお金が自分ごとになる

キャッシュフローコーチが使うフレームワーク「お金のブロックパズル」では、従業員向けの社内研修を提供することもあります。そのとき大切にしているのが、いきなり会社の数字を見せるのではなく、まずスタッフにとって身近な「家計の話」から入るというアプローチです。会社の会計を突然見せられても、なかなか自分ごとにはなりにくいからです。

家計の話と薬局のお金の流れが結びついたとき、はじめて「なるほど、自分たちの給料を守るためには、薬局がきちんと粗利を稼がなければいけないんだ」という理解につながっていきます。

スタッフ自身が動き出すとき

そこから「では、自分たちに何ができるか」という発想が自然と生まれてきます。加算の算定に取り組む、在宅医療に関わる、今の業務を効率化して新たな取り組みに時間を使う——こうしたアイデアを、こちらから押しつけるのではなく、スタッフ自身が考えて動き出してくれるようになるとベストですよね。

賃上げが続いている今、上がった人件費分をきちんと稼ぐという意識はますます大切になっています。調剤報酬が伸びる保証はなく、先行きが不透明な中で、付加価値の高い取り組みへのシフトが求められています。「自分たちの人件費は自分たちで稼ぐ」という感覚をスタッフと共有できるかどうかが、薬局の将来を左右するといっても過言ではありません。

経営者が直接お金の話をすると、反発されることがある

ただ、このようなお金の話を経営者が直接スタッフに話すと、場合によっては反発を招くことがあります。私自身も薬局経営時代はお金の話にはかなり気をつけてきました。中小企業診断士として経営改善のご支援をするようになってからも、特に医療福祉関係の事業所では十分に気を配っています。

以前、福祉関係の事業者の支援に携わった際、こんなことがありました。薬局で言えば管理薬剤師に当たる立場の方が「福祉は金儲けじゃない」という強い信念を持っていて、利益を上げることになかなか積極的になってもらえませんでした。社長が直接、事業存続のためには利益が必要だとお話ししても、考えを変えてもらえなかったのです。

転機になったのは、その方が金融機関の担当者と社長の打ち合わせに同席したときでした。返済や利益確保の話を直接聞いたことで、「やはり、きちんと利益を出さないといけないんだ」という気づきが生まれました。それまでなかなか動かなかったその方が、利益アップのために自ら動き出すという変化が起きたのです。

このように、第三者の言葉として伝えることで、受け入れてもらいやすくなるケースがあります。社内研修でも同様の効果があると考えています。

「合わない人が離れていく」ことも、あらかじめ知っておいてほしい

スタッフにお金の流れを伝え、経営者と同じ課題を共有しようとするとき、あらかじめ知っておいてほしいことがあります。

10人のスタッフがいれば、一定の人はきちんと受け止めて変わり始めてくれます。組織の雰囲気は、そんな小さな変化から起こってくるものです。一方で、会社の目指す方向性に合わなくなったと感じて、離れていく方も出てきます。これは私自身も身に染みて実感していることです。

理念やビジョンを明確にして、それに向かって取り組み始めると、それまでの雰囲気や仕事・働き方になじんでいた人が「合わない」と感じて離れてしまうことがあるのです。知人の採用・組織活性化の専門家も「会社のステージが上がると、そのステージに合う人が引き寄せられ、合わない人は離れていく」と言っています。痛みを伴う改革になることは、念頭に置いておく必要があります。

私自身、最初はやはり退職者が続き、正直しんどい時期がありました。ただ、その後に入れ替わる形で、ビジョンに共感してくれる薬剤師が入ってきてくれました。一緒に同じ方向を向いて仕事を進めることができるようになったとき、経営がぐっとやりやすくなり、ビジョンの実現に近づいていったという実感があります。

だからこそ、余力があるうちに始める

こうした組織づくりには、時間がかかります。半年や1年で劇的に変わるものではありません。だからこそ、余力があるうちに始めておくことが大切です。

資金が枯渇するようなフェーズに入ってしまうと、目先の資金繰りや返済対応に追われて、組織や人への投資にまで手が回らなくなります。採用にかけるコストも、教育のためのコストも元手がありません。資金繰りに追われることで、人材まで目が向きにくい心理状況になることもあります。それがますます経営を苦しくする悪循環につながるかもしれません。

特に小規模な薬局ではなおさらです。少ない人手で経営を立て直さなければならない中、非協力的な方がいたら前に進めないこともあります。だからこそ、余裕があるうちに改革に手を付けておく必要があります。

余裕があるうちに社内の意識改革も進めていく。それが結果的に、薬局の安定経営への一番の近道だと感じています。

ビジョンを言語化して伝える。家計とつながる話し方でお金の流れを共有する。現実の数字をスタッフと一緒に見る。難しそうに聞こえるかもしれませんが、最初の一歩は意外とシンプルです。

「スタッフと同じ方向を向いて、一緒に成長していきたい」と思っている社長さん、ぜひ一度、現状をお聞かせください。どんなお金の話をしているか、どんな研修ができるかについては、無料セミナーでもお伝えしていますので、そちらのご参加もご検討いただければ幸いです。

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