福岡の病院閉鎖から考える、薬局経営者が今動くべき理由

先日、福岡県内で病院の閉鎖が相次いでいるというニュースを目にしました。北九州市にある産業医科大学若松病院や、久留米市の久留米大学医療センターが、来年にかけて相次いで閉鎖するという内容です。累積赤字は50億円を超え、専門家からは「公的医療はもう回りにくくなっている」という声も出ているそうです。
医療業界は、かなり先行きが不安な状態になってきていますよね。同じように、調剤薬局の業界の先行きに不安を感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。私は、薬局もおそらくこの病院と同じように厳しい状況になっていくと考えています。病院と薬局は事業構造が似ているからです。
こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。薬局経営の現場を経験したのち、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。
この記事を読んでいただくと、次のことが見えてくると思います。
・福岡の病院で今、実際に何が起きているのか
・それが薬局経営にとってどんな意味を持つのか
・体力があるうちに、何を考えておくべきか
相次ぐ病院閉鎖の原因
KBC九州朝日放送が2026年6月28日に伝えたところによると、北九州市若松区で唯一の二次救急医療機関である産業医科大学若松病院は、来年5月をめどに閉鎖し、約10キロ離れた産業医科大学病院に機能を集約する予定です。産業医科大学の理事長は、累積赤字が2025年までで55億円になると、厳しい表情で語っています。
久留米市の久留米大学医療センターも、経営難などを理由に来年12月までに完全閉鎖されることが決まっています。地域住民からは「存続してほしい」「行きつけがなくなるから困る」という不安の声が上がっているそうです。
物価高騰が医療機関経営を追い詰めている
なぜここまで病院経営が悪化しているのか。背景にあるのは、物価高騰と人件費の上昇です。
福岡県糸島市の中核病院である糸島医師会病院では、注射針の価格が昨年度の1箱230円から400円に上がりました。10年ぶりに新調したMRIは、以前より2000万円以上高い1億7000万円かかったそうです。院長は「もう来るべきときが来たかなと」と話しています。
国は今年6月から診療報酬を約3%引き上げましたが、現場からは「10%はほしい」という本音も漏れています。人件費を上げなければスタッフが離職してしまうという、切実な事情があるからです。専門家は、この診療報酬引き上げについて「焼け石に水」だと指摘し、公的医療はもう回りにくくなっているという見方を示しています。
帝国データバンクの調査では、2024年度の病院の倒産・休廃業・解散は全国で過去最多の889件、福岡県内でも35件ありました。厚生労働省の調査では、一般病院の72.7%が赤字経営という実態も明らかになっています。
病院だけでなく薬局経営にも通じる話
物価高騰や賃金の引き上げが経営を圧迫するというのは、飲食業でも小売業でも共通する課題です。ただ、飲食店等と決定的に違う点があります。それは薬局を含む医療は、提供するサービスの内容も、価格も、制度に則って動かざるを得ないということ。自分で商品やサービスを決め、価格を決定できるわけではないということです。
「値決めは経営」という格言があるくらい、価格政策は重要です。商品・サービスの内容や価格を決められないというのは、経営を改善するための武器を半分取り上げられているようなものです。
経営を良くするには、加算を取りにいくか、差別化を図って処方箋の獲得を目指すか、在宅医療をますます拡充するか、コストダウンを図るか、あるいは全く別の事業を組み合わせるか。打てる手が、そもそも限られているんです。だからこそ、物価高騰や賃上げの影響を、より強く受けてしまうんですよね。
しかも、何か対策を打つにも先にコストがかかります。先に設備投資や必要経費の支払いがあって、入金はその後になります。薬局の場合、レセプトの請求から入金までにはおよそ2ヶ月かかりますから、対策の効果がキャッシュフローに反映されるまでには、どんなに早くても2ヶ月はかかることになります。一度苦しい状況に陥ると、なかなか回復できないのは、こうした事情があるからなんです。
薬局の経営体力があるうちに動くべき
だからこそ、体力があるうちに、早めに対策を考えておく必要があります。本当に苦しくなってから対策を取ろうとしても、その時にはもう取れる選択肢が限られていたり、リスクの高い方法しか残っていなかったりするものです。
病気の治療も同じですよね。早期発見であれば選べる治療の幅は広いですが、進行してしまうと「手術できない」「この薬は使えない」という制約が出てきます。経営も、体力があるうちにこそ、打てる手が多いんです。逆に言えば、今はまだ大丈夫だと感じている薬局こそ、次の一手を考えるタイミングとしてはふさわしいのかもしれません。
まずは固定費6ヶ月分の現預金を目指すのもあり
今後の調剤業界はますます流動的になりそうなので、手もとの現預金を厚くしておくのも重要です。目安としては固定費の6か月分は持っておきたいですね。
もしまだそこに届いていないなら、業務の効率化やコストの見直しに取り組んで、キャッシュフローを改善していくという発想もあります。今は現金があっても、この先減っていきそうだと感じるなら、余裕があるうちに手を打っておく。何から着手すべきかは薬局ごとの状況によって違うので、一概には言えませんが、この「早めに」という視点はどの薬局にも共通していると思います。
相談できる環境を整えるのも経営者の重要な仕事
こうした判断をするときに、財務の相談というと、まず税理士さんが思い浮かぶ方も多いと思います。税理士さんは本当に頼りになる存在で、私自身も経営判断をする際に、税理士さんから情報や資料をいただくことが多く、頼りにしています。
ただ、メインのフィールドが少し違うんです。税理士さんは税務申告や、これまでの経営状態を扱うことが中心です。一方で中小企業診断士は、これから先のキャッシュフローをどう作っていくかを扱うのが役割です。どちらにもそれぞれの強みがあります。今のような変革期に、これからのキャッシュフローを作っていきたいということであれば、それにふさわしい相談相手を持つ、というのも一つの考え方だと思います。
適切な判断ができる、適切な情報が得られる。そういう環境にきちんと投資しておくことも、経営者としての大事な仕事だと私は思っています。数字が見えていれば、体力があるうちに動けるかどうかも、自分で判断できるようになります。これからのビジョンを実現するために、適切に相談し経営判断できる環境づくりに一定の投資をすることも大事です。
もし今、自社の数字がすぐに把握できる状態になっているか、少しでも不安を感じているなら、一度お話ししませんか。
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