大手薬局チェーンの投資戦略から学ぶ、薬局経営者が今考えるべき「逆算思考」

2026年6月17日の日本経済新聞に、アインホールディングスが中長期ビジョンを見直したという記事が出ていました。成長投資として4900億円を振り向け、そのうちAI・DX分野には500億円を投資するという内容です。
服薬指導や薬歴の記録にAIを活用し、処方箋の処理枚数を増やしていく方針とのことでした。さすが大手ですよね。資金力を活かして、どこに何を投資するのかをしっかり決めています。
こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。薬局経営の現場を経験したのち、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。
規模の大きい小さいの違いはあっても、目指す姿をはっきりさせて、そこに向けて投資をしていく。これは経営者として、私たちも同じように考えなければいけないことではないでしょうか。将来のビジョンやゴールをはっきり示し、そこにどう至るのかを考えるのが、経営者の重要な仕事のひとつなんだと思います。
この記事を読むとわかること
・「今の苦境を脱する」ことだけを考えると、なぜ打開策が見えにくくなるのか
・将来の姿を描くうえで、正解・不正解はないという考え方
・目指す姿から逆算して、資金の準備をどう具体的に組み立てればいいのか
AI・DXへの投資が、薬局経営の余力の差になっていく
DXという言葉は、もうずいぶん前から言われ続けてきましたよね。そしてAIの活用は、今まさに現場で起きていることです。ここは中小薬局としても関心を持っておきたいところではないでしょうか。
こうした投資への取り組みの差が、そのまま生産効率の差になり、資金的にも人数的にも余力の差になっていく。その余力があるからこそ、調剤報酬の変動にもついていける。変革についていけるところはますます進化し、ついていけないところは置いていかれる。制度ビジネスは特に、国の目指す方向についていけるかどうかが存続を左右しますから、しかるべき投資をしてきたかどうかが企業の力の差として積みあがっていくように思います。
もちろん、資金力を真似することはできません。ただ、将来どういうことを実現したいのか、目指す姿をはっきりさせて、そこに向けて投資をしていくという考え方そのものは、私たちも取り入れられると思います。
対処療法だけで終わらせない薬局経営
私は日頃、経営改善などの仕事が中心です。経営改善は苦しくなった企業さんの現状を分析し、課題を整理して対策を立て、経費や税金、返済などが滞りなくできるようにご支援する仕事です。
そのため、普段のご支援では、苦しい状況にある事業所さんとお話しすることが多くあります。「今苦しい」という企業さんの場合、どうしても対策が近視眼的というか、短期的になりやすいんですよね。
今苦しい、というのはもちろん対処しなければいけません。月末に支払うお金がなければ事業が立ち行かないというのであれば、そこを何とかしなくてはなりません。
あたかも、熱が高い、痛みが強いという主訴の方がいたら、とりあえず解熱鎮痛剤を出すようなものです。そういう対処療法は必要です。ただ、それだけで終わってしまうと、良くならない場合もありますよね。根本的な治療も行うはずです。
それと同じように、企業の課題の根本治療をするのであれば、「将来どういう状態になっているのがいいのか」を考える必要があります。そこから、今どんな治療をすべきかを考えたほうがいいと思います。
目指す薬局の姿に、正解はない
将来を決めることは、経営者の一番重要な仕事の一つだと思います。これまでいろいろなタイプの経営者さんとお話をしてきましたが、その方の資質やによって、いろいろな考え方があります。
例えば今、国の方向性としては、百億企業のような大規模化・効率化、大きく稼ぐビジネスを作らせようという流れがあります。それに向いている経営者もいれば、地道にこつこつ、自分自身も最前線でプレイングマネージャーをしながら小規模の事業をやっていくのに向いている方もいます。
家族で地道にやっていくことが好きで、それが合っている方もいます。
私自身は、どういう姿を目指すのが正解、とは思っていません。目指す姿に、基本的には正解はないんだろうと思うんです。一概にこれがいい、というものはないと思うんですよね。経営者さんが目指したい姿を、ちゃんと目指せばいい。それでいいと思っています。
いずれにしても、自分たちがどんな事業をしていたいかを考えて、その実現を目指して取り組むことが重要です。
ゴールから逆算して、薬局の資金の手当てを考える
目指したい姿から逆算して、何をしなければいけないかを考える。ここは変わりません。思い描いたことがすぐに実現できるとは限りませんし、そもそも実現できるかどうかも分かりません。それでも、環境をしっかり観察しながら、目指すところにどう近づいていくのかを常に考え続け、動き続けることが大事なんだろうと思います。
将来のビジョンが決まり、それをいつまでに実現したいかが決まり、そのためにどれくらいお金が必要かが決まれば、具体的な計画は立てやすくなります。
たとえば、5年後に1000万円の投資をしたいと決まれば、年間200万円ずつ貯めていくのか、それとも年間100万円ずつ貯めて残りの500万円は融資で調達するのか、といった選択肢が見えてきます。
ただ、多くの場合、こうした将来の計画を考えずに、数年かけて準備するということがあまりされていないように感じます。だからこそ、3年から5年の計画を立てて、きちんとビジョンを持って準備していくことが大切なのではないでしょうか。
もちろん、計画通りに進むことは少ないものです。それでも、計画を立てることでしっかり準備ができますし、ずれが生じたときに早く気づける、というメリットもあります。
先の読めない時代だからこそ、薬局の将来像を
世の中の環境は、これからも変わり続けていきます。だからこそ、自分たちがどういう薬局でありたいのかを、今このタイミングで一度、考えてみませんか。
将来のビジョンから逆算して、今何をすべきかを具体的に検討する。そのプロセスこそが、これからの薬局経営を支える土台になります。
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