先が読めない今だからこそ、薬局の経営計画を作っておく

この記事を読むとわかること
- 環境が変わりやすい時期に、経営計画を作る意味
- 採用や高額薬の処方、経営改善策の影響を事前に試算する考え方
- 毎月の実績を反映し、先の利益と資金繰りを確かめる方法
「この先どうなるか分からないのに、計画を作っても意味がないのでは?」
「必要なのは分かっているけれど、忙しくて手を付けられない」
日々の業務に追われて、経営計画にまで時間をかけられない。
そう感じている薬局経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
こんにちは、天心堂L&Cコンサルティングの梅﨑です。
薬局を取り巻く環境が変わる中で、今までどおり経営を続けられるのか、心配になることもありますよね。
確かに、計画を作っても前提が変われば、実際の数字は計画とは違ってきます。
未来をぴたりと当てることは、誰にもできません。
それでも、先が読めないからこそ、変化が起きたときにすぐ動けるようにしておきたいのです。
その備えを支えるのが、経営計画と資金繰り計画です。
環境の変化を、薬局の経営に置き換えて考える
調剤報酬や薬価の改定、採用の難しさ、賃上げ、物価高によるコストの増加など、薬局経営に関わる変化は多いですよね。
高額な薬の処方が急に増えることもあります。
医薬品の供給不足や、医薬品卸との交渉が難しくなっていることも、経営を左右します。
こうした条件の多くは、自分の薬局だけでは変えられません。
だからこそ、「その変化が起きたら、薬局の利益や資金はどう変わるのか」をシミュレーションできるようにしておきたいですよね。
これから起こりそうな変化は、計画に織り込んで試算しておけば、事前に備えることができます。
想定していなかった変化が起きたときも、計画に反映すれば、いつ頃から、どれくらいの影響が出るのかを確かめられます。
そのうえで、対策を取った場合に、どのように回復していけるのかまで考えられます。
変化の影響と、それに対する打ち手を数字で確かめることで、早めに対応しやすくなります。
経営計画は、未来を当てるためのものではないんです。
変化や対策をシミュレーションする
ここからは、具体的な場面で考えてみましょう。
一つ目は、薬剤師を一人採用する場合です。
説明のために、年間の給与を500万円と仮定します。
採用すれば、その分の人件費が増えます。
一方で、採用によってどんな業務を増やせるのか、それによって収益がいつ頃から、どれくらい増えるのかも見込んでおく必要があります。
給与だけでなく、会社が負担する社会保険料なども含めて、採用後の損益と、月ごとの支払いを計画に反映します。
ここで注意したいのは、時間のずれです。
採用後は給与の支払いが必要になりますが、収益がすぐに増えるとは限りません。
収益が増えるまでの間も、必要な支払いを続けられるのか。
利益の見通しと、お金が出ていくタイミングの両方を見ておきたいですね。
二つ目は、門前の医療機関から「高額な抗がん剤を院外処方に切り替えたい」と打診された場合です。
門前の医師の交代によって処方内容が変わり、高額な薬が増えることもあるでしょう。
その処方を受けると、収益と薬の仕入れはどう変わるのか。
特に気をつけたいのは、入金と支払いのタイミングです。
通常どおり請求が進んだ場合、調剤報酬のうち保険請求の分は、調剤した月の翌々月に入金されるのが一般的です。
一方で、仕入代金の支払いがそれより先に来るなら、その間の資金を薬局で立て替えることになります。
高額な薬であればあるほど、立て替える金額も大きくなります。
逆に、仕入代金の支払いが4か月後など、入金よりずいぶん後になる場合も注意が必要です。
入金直後は手元の資金が増えて見えても、その中には後で仕入代金として支払うお金が含まれています。
それをほかの支出に使ってしまうと、支払時期に資金が足りなくなる可能性があるんです。
実際の仕入条件と入金予定をもとに、いつ、いくら入金され、いつ、いくら支払うのかを資金繰り計画に反映しておきます。
一時的に資金不足になる見込みでも、先回りして手を打つことができれば安心ですよね。
実際に、高額薬の院外処方を受けることにした後、想像以上に資金負担が重く、資金が回らなくなった例や、経営を続けられなくなった例もあります。
「処方を受けることになった」で終わらせず、その変化が経営にどう響くのかを、事前に試算しておきたいところです。
薬局で動かせることを、対応策として試算する
外部の環境は変えられなくても、薬局で取り組めることはあります。
- 処方箋の受付回数を増やすための取り組み
- 在宅の対応件数を増やす取り組み
- 算定要件を満たし、新たな加算を取得する取り組み
- コストの見直しや、人員配置の変更
これらを実行したら、収入や費用はどう変わるのか。
取り組みのために必要な支出も含めて、いつ頃から利益や資金繰りが回復していくのかを試算します。
経営計画があれば、変化の影響だけでなく、自分たちで取り組める対策の効果も確かめられます。
数字と取り組みを合わせて考えることで、対応策がより具体的になります。
賃上げや設備更新も、実行前に数字で確かめる
外からの変化だけでなく、薬局で決めることにも、事前の試算は欠かせません。
その代表が、賃上げや設備の更新です。
賃上げを「これくらいなら払えるだろう」という感覚だけで決めるのは避けたいところです。
実際に、事前のシミュレーションをせずに賃上げを行い、一気に赤字に転落した会社もあります。
どこまでなら賃上げできるのか。
賃上げによって赤字になるなら、ほかの経費をどう見直すのか、利益をどう増やすのか。
取り組みと数字がかみ合っているかを、実行する前に確かめておきましょう。
設備も同じです。
たとえば、5年のリース期間が終わる時期に設備を更新する予定があるなら、その費用と支払時期をあらかじめ計画に入れておきます。
もちろん、何もかもを想定する必要はありません。
薬局への影響が大きいことや、近いうちに起こりそうなことから計画に織り込めば十分です。
処方箋の受付が見込みより少なくなった場合も、考え方は同じです。
そのとき、どれくらい利益が残り、必要な支払いを続けられるのか。
数字を動かしてみると、「この程度なら対応できる」「ここまで変わると別の対策が必要だ」という境目が見えてきます。
ただし、数字を合わせるためだけに、患者対応に必要な人員や設備まで削るわけにはいきません。
薬局として守るべき体制と、使える資金の両面から、実行できる対応を考えます。
経営計画を立て、資金繰り計画で確かめておくことは、安全な経営に欠かせません。
毎月、計画を実績に置き換えて見直す
計画は、作って終わりではありません。
作った後も毎月きちんと確認していくことで、初めて役に立ちます。
何か問題が起きたときだけ見直すのではなく、定期的に、淡々と続けることが大切です。
そのためには、日々の記帳を進め、翌月20日頃までには前月の試算表ができあがっている状態を目指したいところです。
これは、経営判断に使える数字を早めにそろえるための目安です。
試算表で損益の実績を確認し、資金繰りの実績も整理します。
そのうえで、計画と実績の差を確かめ、経過した月の計画値を実績に置き換えていきます。
そして、実際に手元に残った資金をもとに、この先の月の見通しを確認し直します。
計画どおりに進んでいるのか。
差があるなら、数値の見込みそのものを見直すべきなのか、それとも予定していた行動を見直すべきなのか。
毎月の数字を確かめることで、その判断ができるようになります。
たとえば、処方箋の受付が見込みより少なかった場合でも、今後の見込み自体が変わったのか、予定していた取り組みが進んでいないだけなのかによって、打つべき手は変わってきます。
また、実績が大きく下振れした場合だけでなく、上振れした場合も、その先の利益や資金がどう変わるかを見直します。
毎月の確認に加えて、新しい変化が分かったときは、その都度、先の見通しに反映させます。
こうして実績と変化を取り込みながら、計画と実際の経営のずれを管理していきます。
計画を作るのは、変化に備えるため
まずは一度、今の実績と分かっている情報をもとに、「この先はこうなるだろう」という経営計画と資金繰り計画を作ってみましょう。
あとは毎月の実績を反映し、変化が起きたときには、その変化も計画に織り込んでいきます。
そうすれば、これからの利益や資金の動きを、その時点の最新の情報で確かめられるようになります。
先が読めないからといって、数字の見通しを持たないまま経営を続けるのは不安ですよね。
変化に備え、その影響を確かめるために、計画を作り、使い続けていくのです。
厳しい経営環境だからこそ、計画を持ち、変化に合わせて活かしていきましょう。
ご自身だけでは整理しにくい場合は、薬局の事情が分かる専門家と一緒に、数字と対応策を確かめてみてください。
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