その改善策で、お金は足りますか?薬局の取り組みを数値計画に落とし込む

その改善策で、お金は足りますか?薬局の取り組みを数値計画に落とし込む
この記事を読むとわかること
- 改善の取り組みを、売上・費用などの数値計画に落とし込む考え方
- 薬局の各計画で確認したい、行動・人員・設備とのつながり
- 改善後の資金で、返済や未払金の支払いまで足りるかを確かめる必要性
「売上を回復させるために、こういうことに取り組もうと思っています」
「返済するお金が足りないので、これをやってみようと思うんです」
経営相談では、こうしたお話をよく伺います。
今の状況を何とかしようと、いろいろ考えていらっしゃるんですよね。
ただ、その取り組みによって、売上や利益、資金繰りがどう変わるのかまで整理できているでしょうか。
こんにちは、天心堂L&Cコンサルティングの梅﨑です。
経営計画を作るうえで、具体的な取り組みと、その結果を表す数値計画を結び付けることは欠かせません。
取り組みによって「良くなるか」と、「それだけで足りるか」は別の話です。
今回は、考えている取り組みを数字に置き換え、経営判断に使うことについてお話しします。
取り組みたいことはある。でも、数字はどう変わる?
商工会の窓口相談や、経営改善計画の策定、経営診断などでは、経営者の方から、これから取り組みたいことをたくさん聞かせていただきます。
ところが、そこから少し踏み込んで、
「それをやると、売上はどれくらい増えそうですか」
「そのために、どれくらい経費がかかりますか」
と尋ねると、「うーん」と考え込まれることも少なくありません。
改善の方向性はある。
でも、それが数字にどう表れるかまでは整理できていない、という状態です。
例えば、地域住民向けの健康イベントを開きたいと言われることがあります。
地域で薬局を知ってもらい、さまざまな医療機関の処方箋を持ってきていただく機会を増やしたい、という考えです。
では、イベントの準備や当日の対応は誰がするのでしょうか。
普段の業務に加わる仕事を、今の人員で担えるでしょうか。
追加の人件費や開催費用がかかるなら、そのコストをどう吸収するのでしょうか。
こうした点に話が及ぶと、すぐには答えが出てこないことがあります。
取り組みを始めれば、売上が増えるかもしれません。
ただ、仕入れや人件費なども増えれば、期待したほど利益が残らない可能性があります。
効果と費用を数字で確かめないまま走り出すと、改善のための取り組みが、かえって資金繰りを苦しくすることもあるのです。
取り組みを、各項目の数値計画に置き換える
数値計画は、売上だけを考えて終わり、というわけにはいきません。
仕入れ、経費、人員、設備投資、資金調達まで、一つずつ確認していきます。
中期的な経営計画を作るのであれば、売上から資金調達までを一通り整理し、計画同士のつじつまを合わせておきたいところです。
売上計画と、売上を実現する行動をつなげる
薬局では、処方箋の受付回数や、1回当たりの薬剤料・技術料などから売上を見込んでいきます。
受付回数が増えるなら、いつ頃から、どれくらい増えるのか。
調剤報酬改定や加算によって、収入がどう変わるのかも考えます。
加算については、売上への影響だけでなく、必要な実績を満たすための行動まで検討します。
どんな活動を、誰が、どれくらい行うのか。
その行動が、具体的なアクションプランに織り込まれているでしょうか。
また、必要な実績を継続して満たすために、無理なく動ける人員体制や設備を確保できるかも確認します。
そのための費用は、人員計画や設備投資計画に反映させます。
売上の見込みが、過去の実績からかけ離れすぎていないかにも気を付けたいですね。
仕入れ計画に、処方内容や在庫の変化を反映する
売上を見込んだら、それに対応する薬の仕入れを考えます。
必要な在庫が増えるのか、今の在庫を減らせるのかも確認します。
例えば、医師が交代したり、医療機関の方針が変わったりして、高額な薬の院外処方が始まるという話があれば、その影響も反映しておきたいところです。
売上だけを増やし、仕入れや在庫の見込みは今までどおりでは、実際に必要となる資金を見落としてしまいます。
経費計画では、見直せる費用と必要な費用を分ける
今の支出に見直せるものがないかを確認するとともに、新しい取り組みにかかる費用も見込んでおきます。
ただ、利益を増やすために、何でも削ればよいわけではありません。
レセコンや電子薬歴など、業務に必要な機能を維持する費用は確保する必要があります。
契約内容や使い方を見直す余地はあっても、必要な機能まで失わないようにしたいですね。
見直せる費用と、業務を続けるために必要な費用を分ける。
新たな取り組みの費用も含めて、実際に運営できる経費計画にしていきます。
人員計画は、必要な体制を考え、給与を積み上げる
人員計画では、今の業務と、これから増える業務を合わせて考えます。
在宅への取り組みや加算の実績を満たす活動も含めて、今の体制で対応できるかを確認します。
人件費を抑えるために、薬剤師さんや事務スタッフさんの必要な人数まで減らしてしまえば、薬局の運営に支障が出ます。
また、今の給与水準で必要な人員を確保し続けられるかも検討したいところです。
そのうえで、従業員さん一人ひとりの給与見込みを積み上げます。
賞与や会社負担の社会保険料なども含めて、人件費を計画します。
採用や給与の見直しが必要なら、いつから、どれくらい費用が増えるのか。
売上を実現するための体制と、その費用をセットで考えるわけです。
設備投資計画は、導入・更新・リースの時期を整理する
薬局には、分包機や散薬の調剤機器など、さまざまな設備があります。
新しく導入するものだけでなく、今ある設備をいつ更新するのか。
リースがいつ終了し、再リースになるのか。
それぞれ、どれくらいの支払いが生じるのかも整理します。
まとまった資金が必要になる場合は、金額と支払時期まで見込んでおきます。
資金調達計画は、資金繰りから逆算する
各計画を資金繰りに反映すると、納税や賞与、設備更新の時期などに、お金が不足する見込みが出てくることもあります。
その場合は、必要な金額と時期を確認し、手元資金で対応できるのか、借入などが必要なのかを考えます。
資金が不足する月になって初めて相談するのでは、間に合わないかもしれません。
資金調達の準備や手続きにかかる時間も考えて、前もって動けるようにしておきたいですね。
「良くなるか」と「それだけで足りるか」は別
各項目の計画ができたら、整合性を確認しながら損益計画にまとめます。
売上から原価や経費を差し引いて、どれくらい利益が残るのかを確認します。
ただし、利益が出る計画だからといって、必要な支払いをすべて賄えるとは限りません。
例えば、借入金の元本返済は費用にはなりませんが、実際にはお金が出ていきます。
設備を購入した場合も、損益計画に計上する費用と、実際に支払う金額や時期は一致するとは限りません。
そこで、損益計画に加えて、いつ入金され、いつ支払うのかを整理した資金繰り計画まで作ります。
借入金の返済だけでなく、すでにある未払金の支払いも忘れずに織り込みます。
通常の支払いに、過去の未払い分が加われば、その分だけ必要なお金は増えますよね。
数字を積み上げてみると、「改善はするけれど、これだけでは全然足りない」ということもあり得ます。
場合によっては、経営者やご家族の生活支出まで見直す必要が出てくることもあります。
個人事業なら、事業から確保する生活費も資金の見通しに含めます。
法人の場合は、会社の資金繰りと家計を分けたうえで、役員報酬と生活に必要なお金の関係を確認します。
苦しい話ですが、足りないことが先に分かれば、追加の対策を考える時間が取れます。
設備の故障など、新たな出費が生じたときにも、その支払いを計画に加え、先々の資金繰りがどう変わるかを確認します。
普段から計画を作っておけば、新しい経営判断が必要になったときにも、資金への影響を考えやすくなります。
「何となくいけるだろう」で決める前に、返済や未払金まで支払った後、手元のお金が足りるかを確かめておきましょう。
数値計画で、これからの経営を共有する
数値計画は、経営者自身の判断だけに使うものではありません。
金融機関に、取り組みや改善の見通しを説明するときにも役立ちます。
「これを頑張ります」に加えて、「その結果、売上や利益、資金繰りがこう変わる見込みです」と説明できれば、金融機関とも具体的な話がしやすくなります。
ほかの関係者への説明や、スタッフさんとの共有にも使えます。
スタッフさんには、必要な範囲で、取り組む内容と期待する改善を分かりやすく伝えます。
「これから、こういうことに取り組む」
「それによって、薬局の経営はこう良くなる見込みがある」
取り組みの目的と、その先にある薬局の姿を共有する材料にもなると思います。
改善策を数字に置き換えると、期待する効果だけでなく、必要な費用や足りない部分も見えてきます。
各計画をつなげ、損益と資金繰りまで確認して、経営判断や関係者への説明に使っていきましょう。
皆さんの薬局でも、取り組もうとしていることが、数値計画にきちんと反映されているか、一度確かめてみてください。
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