今の立地・体制のまま、広域処方箋を増やすために、薬局ができること

この記事を読むとわかること
- 調査から見える、患者さんが薬局を選ぶ基準
- 今の立地や体制で、近隣の方に利用してもらうための取り組み
- 患者さんの喜びを、薬局の健全経営につなげる考え方
今の設備・体制を変えずに、広域処方箋を増やしたい
こんにちは。
元調剤薬局経営者で、現在は中小企業診断士として創業や事業承継、経営改善を行っている、天心堂L&Cコンサルティングの梅﨑です。
調剤薬局のご支援についても、金融機関のご依頼で、経営改善をサポートさせていただいています。
経営改善の場では、経営の安全性を高め、借入金を返済しながら持続的に経営していくことが最優先になります。
そのため、まずコストダウンを優先して進めることになります。
ただ、コストダウンだけでなく、患者さんのニーズに応え、喜んでいただく取り組みも同時に検討しています。
その結果として処方箋が増え、収益も改善するなら、それに勝るものはありませんからね。
もっとも、処方箋枚数は簡単には増えません。
そのことは私自身、身をもって実感しています。
私も薬局経営時代、広域処方箋を増やすことにかなりの労力を割いてきました。
私がいた薬局は、当時は98~99%の集中率だったと思います。
(もうだいぶ前なので、若干記憶があいまいですが・・・)
広域の処方せんを集める努力を続けて、90%を切るかという水準まで広域処方箋を増やしましたが、だいぶ手間暇はかかりました。
とはいえ、地域の方に喜んで来局していただける薬局は、やはり強いと思います。
処方せん枚数を増やす方法としては、オンラインでの集患に取り組むの方法や、在宅に大きく力を入れるなど、ビジネスモデルを変える方法もあります。
が、人員体制や設備、周辺環境によっては取り組みにくいでしょう。
実際、経営改善に取り組まなければならない薬局さんは資金が枯渇していることもあり、大幅なビジネスモデルの変更は困難です。
そこで、今の設備や体制をあまり変えずにできることを考えるため、様々な調査を整理してみました。
近さ・待ち時間・話しやすさから、患者さんの希望を知る
厚労省や民間企業(ファーマシフトさん、デロイトトーマツさん)が公開している資料を確認し、AIを使って整理したものが次の表です。
| 調査 | 対象・設問 | 主な結果 |
|---|---|---|
| 厚生労働省・令和4年度調査 | 患者2,285人。薬局を選ぶ理由・複数回答 | 以前から利用50.0%、医療機関から近い48.8%、話しやすい・人柄の良い薬剤師33.5% |
| ファーマシフト・2024年調査 | 成人1,000人へのオンライン調査のうち、かかりつけ薬局を決めている人の選択理由 | 病院から近い53.6%、自宅・職場から近い34.9%、信頼・相談できる薬剤師23.4% |
| デロイト トーマツ・2022年公表 | 全国の20歳以上5,648人への調査。調剤薬局利用者が重視する項目 | 医療機関から近い83%、待ち時間が短い75%、説明が分かりやすい64% |
選ばれる理由というか、最初に来局するきっかけとして圧倒的に多いのは、医療機関や自宅、職場からの近さですね。
これは想像しやすいところだと思います。
厚生労働省の調査では、近さや以前からの利用に加えて、話しやすさや人柄も選択理由に挙がっています。
薬剤師側が対応にこだわるだけでなく、患者さんに「話しかけやすい」「相談しやすい」と感じてもらうことが大事ですね
別の設問では、飲み合わせや薬の重複の確認も求められています。
そうした支援を受けるうえでも、質問しやすく、説明が分かりやすいことが土台になると思います。
ファーマシフトさんの調査でも、近さが挙がっています。
広域処方箋を増やすなら、近隣の方が受診帰りに立ち寄り、自宅近くで薬を受け取る形は、考えやすい方向でしょう。
生活動線の中で利用してもらうという視点です。
なお、同調査には医療機関と連携した総合的なサポートという項目もありますが、具体的な内容が明確でないため、今回は中心には取り上げません。
デロイト トーマツの調査からは、近さに加え、待ち時間の短さや説明の分かりやすさが重視されていることが分かります。
来局を呼びかけるとともに、なるべく待たずに受け取れる工夫や、理解しやすい説明も考えておきたいところです。
調査ごとに対象や質問は異なりますが、自局で何に取り組むかを考える手がかりになります。
近さを生かすには、近隣の方に存在を知ってもらう
近くにあっても、薬局の存在が知られているとは限りません。
私が経営していた薬局は、病院の目の前で、すでに40年営業していました。
地域に根差した薬局を目指していたので、地域住民の健康づくりに取り組もうと、測定会や試食会など、地域住民向けイベントを企画しました。
まだ健康サポート薬局や地域支援体制加算もない時代で、調剤薬局が地域住民向けのイベントを開催するのは珍しかった時代です。
なので参加者を集めようと、案内を配るために近隣のお宅を訪ね、玄関先でお声がけしたのです。
すると、結構な割合で「そんなところに薬局があった?」と言われました。
40年営業していても知られていない。
その現実に愕然としました。
長く営業しているから知っているはず、とは考えず、まずは存在を知ってもらう必要があると実感した経験です。
日々の挨拶や案内を、処方箋を持ってきてもらうきっかけにする
取り組みは、小さなことからでも始められます。
例えば、店舗前や駐車場の掃除中に、通りかかる方へ笑顔で挨拶する。
地域イベントの案内を配り、直接ご挨拶する。
地域の集まりに積極的に参加する。
SNSやブログで、場所や利用方法、薬剤師の人柄を伝えることも考えられます。
知人の薬局では、定期的に地域住民を集めたイベントを開催して、地域の方の来局を促していました。
イベント以外にも様々な施策を行っていましたが、門前薬局なのに最終的に集中率50%以下を達成したと聞いたときは驚きました。
もちろん立地や企画力、かけた労力にもよると思いますが、これだけ成果が出ると大きいですね。
来局している近隣の方には、お薬手帳などを確認する中で、他の医療機関の処方箋も受け付けていることをお伝えする。
まず薬局を知ってもらい、「自分もここで薬を受け取れる」と認識してもらうことです。
併せて、事前の在庫確認や、薬がない場合の対応、受け取りの見通しも伝えられるようにしておきます。
昨今は薬不足で、実績のない薬の入荷が出来ない場合などもありますしね。
せっかく処方せんを持ってきてくれたのに、対応できなかったらガッカリさせてしまうので、入荷の見通しが立たない場合には、その旨をお伝えしておく方が良さそうですね。
もちろん、上記は過去の経験等を踏まえた一例にすぎません。
近隣住民に存在を知ってもらい、来局してもらう方法は他にもあるかもしれません。
ぜひあなたの薬局らしい方法を検討してみてください。
来局しやすい薬局を目指す方針を、従業員と共有する
こうした取り組みには、従業員の協力も欠かせません。
説明の分かりやすさや接客の良さも重要なポイントなので、接遇研修などを実施するのも良いでしょう。
ただ、接遇研修だけでなく、「地域の方が来局しやすい薬局を目指す」という方向性を共有し、そのために柔らかな応対や親しみやすい挨拶を大切にするのだと伝えていくことも大切だと思います。
単に接客態度を良くしましょうと言うだけでなく、会社のビジョンと日々の行動を結びつけ、どんな薬局になりたいのか、そのためにどんな接客が必要なのかを理解してもらうことも必要だと思います。
接客だけでなく、地域向けイベントやSNS等での情報発信がどんな意義を持ち、理想の薬局づくりにどう貢献するのかを共有することで、薬剤師さんやスタッフさんの協力を得られるようにしたいですね。
成果と費用を数値計画に反映し、健全経営につなげる
取り組みが決まったら、せっかくなので数値にも落とし込んでみましょう。
今の経営状況を踏まえ、いつまでに広域処方箋をどの程度増やしたいか、そこからどれだけの粗利益を見込むかを考えます。
広報費やイベント費、追加の人件費も計画に反映し、新たな来局者数や広域処方箋枚数などの目標値を作っておくと、実績との比較もできますし、改善の手掛かりにもなります。
活動と数字を結びつけることで、経営改善への効果を確かめやすくなります。
患者さんの希望を知り、近隣の方に薬局を知ってもらう。
そして、従業員とともに利用しやすい薬局をつくっていく。
そうした努力が収益につながり、健全な経営を続けられることが、薬局を長く存続させる力になるのではないでしょうか。
地域のインフラとして残り、患者さんを守り続けるためにも、今できる取り組みを選び、数値計画に反映するところまで進めてみてください。
参考資料
- 厚生労働省「調剤について(その2)」
2023年11月8日・中央社会保険医療協議会資料。8~9ページ「患者が薬局を選択する理由」「患者が薬局に求める機能」を参照。
資料PDF - 株式会社ファーマシフト「薬局に関する調査」
2024年4月10日公表。かかりつけ薬局を決めた理由などを参照。
調査結果・プレスリリース - デロイト トーマツ グループ「調剤薬局・ドラッグストアの経営者必見!顧客・患者が求めるこれからの薬局とは」
2022年3月23日公表。薬局選択で重視される項目についての調査解説を参照。
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