2026-05-11

会社にお金が残らない5つの原因|調剤薬局経営者が知っておきたい資金繰りの落とし穴

「頑張っているのに、なぜか手元にお金が残らない」

こんなお悩みを抱えている経営者の方、とても多いです。業種を問わず、売上も利益もちゃんとあるのに、なぜか支払いや返済が苦しいなんて経験、ありませんか?

こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。薬局経営の現場を経験したのち、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。

今回は、会社にお金が残らない主な原因を5つ+1に整理してお伝えします。「ウチはどれに当てはまるだろう」と思いながら読んでいただけると、きっとヒントが見えてくると思います。

この記事を読むとわかること

・会社にお金が残らない5つの主な原因
・調剤薬局特有の資金繰りリスク(入金サイクルと在庫の問題)
・資金繰りを改善するために、まず何に気づくべきか

会社にお金が残らない5つの原因:一覧

お金が手元に残らない原因は、概ね次の5つのどれか、あるいは複数が重なっているケースがほとんどです。

① そもそも赤字経営である
② 借入金の返済が稼ぎを上回っている
③ 入金と支払いのタイミングがずれている(薬局はとくに注意)
④ 在庫が過剰になっている
⑤ 投資がうまくいっていない

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

① そもそも赤字経営である

これは当然ながら、お金が減っていく大きな原因になります。

赤字だと出ていくお金の方が大きいわけですから、いつか資金は枯渇します。

「でも、借入金の返済はできているよ」という方もいらっしゃいます。

過去にご支援した調剤薬局の経営者さんの中にも、決算書上はずっと大きな赤字が続いているのに、返済は何とかなっているという会社がありました。

ただ、これは「たまたまお金の都合がついた」か、「過去に稼ぎ積み上げたお金を取り崩している」だけで、いつか破綻するのは間違いないところです。実際にその会社も、決算書だけでは説明がつかないお金の動きがあり、それで返済を回しているような状態でした。

当然、金融機関からすれば「なぜ返せるのかわからない、いつまで続くのかわからない」となりますので、非常に不信感を持たれていました。

医薬品卸の担当者さんも同様で、「支払いサイトを短くするか、現金取引でないと・・・」という厳しい態度をとられていました。そりゃそうですよね、出所がよくわからないお金で支払いが続いているような状態では、回収できなくなるリスクがあるわけですから。

営業赤字が続いているうちは、新たな融資を受けることは難しいと考えておいた方がいいでしょう。2期連続で赤字を計上していると、融資の難易度がさらに高くなります。

② 借入金の返済がキャッシュフローを上回っている

このパターン、実は経営改善の支援をしていると結構目にします。

中小企業で返済が苦しくなる場合、大きく分けて2つのパターンによく出会います。一つは、売上が落ちて利益が減り、返せなくなるケース。もう一つは、きちんと稼げてはいるものの、それ以上に返済が多くて詰まってしまうケースです。

後者に多いのが、出店や設備投資の際に多額の借り入れをして、建てたお店から上がってくる稼ぎ(キャッシュフロー)よりも返済が上回ってしまっているパターンです。利益は出ているのに、それを超える返済でお金が出ていってしまう。これが続くと、手元の資金は減っていきます。

こういった会社の経営者さんに共通しているのが、自社の「返済余力」を把握していないことです。売上や利益は見ていても、資金繰り全体への意識が向いていない。「だいたいこれくらいなら返せるんじゃないか」という感覚で動いているため、自社がどれくらいの借入が適正なのか、今が借りすぎの状態なのか、もっと借りなければいけない局面なのかも、判断できていないことが多いです。

また、資金繰り表を作っていないために、先々の資金の動きが見えていないケースも多く見られます。お金が足りなくなって初めて焦って動く、というパターンが多いのです。

ただ、調剤報酬改定などで業績が悪化してから融資を申し込んでも、金融機関は警戒して貸しにくくなります。2026年の調剤報酬改定もなかなか厳しい内容ですよね。経営が厳しくなってから借りよう、支援を受けようとしても難しい場合があります。まだ大丈夫といううちに、余力があるうちに借りておく。先々の資金の動きを予測しておく、これが大切です。

③ 入金と支払いのタイミングがずれている

これは薬局にとってとくに大きな影響があるポイントです。

調剤薬局は、売上に対する薬の仕入れコストが非常に高い業種です。業種別審査事典(第15次)をもとに薬局のお金のブロックパズルを作ると、売上の約63%が原価になります。つまり、1,000万円の売上があっても、630万円はお薬の仕入れで消えているわけですね。

飲食店では売上の30%程度、小売業でも50%程度が原価といわれますから、薬局がいかに仕入れの負担が重い業種かがわかります。

そして問題は、入金と支払いのタイミングです。国保・社保へのレセプト請求は月末締めの翌月10日提出で、入金は翌々月の20日前後になります。一方、薬の仕入れ代金の支払いがそれよりも先に来てしまう場合は、先にお金が出ていくことになるので、資金繰りが苦しくなります。とくに高額な薬が多い薬局ほど、この影響は大きくなります。

また、「売上を増やせばいい」という発想が、一時的に資金繰りをさらに苦しくすることもあります。たとえば在宅医療に新たに取り組んだ場合、患者さんへの薬の提供や薬剤師の人件費、燃料代などは先に発生しますが、入金は後になります。頑張って枚数を増やした分だけ、先に資金が出ていってしまうわけです。

売上を上げるときには、運転資金も増加することに注意しましょう。

④ 在庫が過剰になっている

在庫はお金が形を変えたものです。棚に薬が積まれているということは、それだけの現金が動かせない状態になっているということでもあります。それに保管に係る費用(電気代等)もかかりますので、在庫が多ければ多いほど資金を圧迫します。

近年は高額な薬が増えていることもあり、在庫の金額が膨らみやすくなっています。使用患者が1人しかいないような薬は、その患者さんが来なくなった途端に過剰在庫になってしまいますし、期限切れになれば廃棄するしかありません。

私が薬局経営をしていた頃は、インスリンなどの冷所保存の薬でも返品を受け付けてくれる卸さんがまだありましたが、途中から全ての卸さんが返品不可になりました。当然のことではありますが、それだけ在庫管理の重要性が増したということでもあります。

また、デッドストックになってしまったお薬を、やむを得ず他の薬局さんに買い取ってもらおうとしても、薬価の6割程度でしか引き取ってもらえなかったりしますよね。できるだけ損が出ないような方法をとったとしても、全てうまく引き取ってもらえるとは限りません。となると、仕入れ値を下回ることもあります。過剰在庫は、気づかないうちに資金を圧迫していることがありますので、ご注意ください。

⑤ 投資の失敗

不動産や株式投資は別の話として、設備投資や出店計画には大きな資金が動きます。

土地・建物を多額の借入で取得して新店舗を出した場合、長期借入とはいえ月々の返済額はそれなりに大きくなります。その新店舗が想定通りに稼げなかったとき、あるいは調剤報酬改定の影響で収益が落ちたとき、一気に返済が苦しくなるリスクがあります。

どんどん事業を拡大している経営者さんの話を聞いていると、「これだけ借りて本当に大丈夫だろうか」と心配になるケースも正直あります。安全な計画を立てるためにも、投資の前には自社の返済余力をしっかり確認しておくことが大切です。

少しケースが違いますが、実際にご相談があった例として、M&Aでの開業を考えている方の案件がありました。このケースは出店費用がかさみすぎており、投資回収には100年以上かかるような計算になっていました。さすがにこれは行き過ぎなケースですが、実際にこのような案件で出店してしまう場合もあるのです。

(追加)資金繰り表を作っていない

原因としてもう一つ付け加えるとすれば、資金繰り表を作っておらず、先々の資金の動きを把握できていないことです。

お金が足りなくなってから「やばい」と焦って対応するのでは、できる手が限られてしまいます。資金繰り表があれば、「今後数か月はどうなりそうか」が事前にわかりますので、早めに手を打つことができます。

まとめ:どれか一つでも当てはまったら、早めに動きましょう

会社にお金が残らない主な原因をまとめると、次の通りです。

① 赤字経営が続いている
② 借入金の返済がキャッシュフローを上回っている
③ レセプト入金より薬の仕入れ支払いが先になっている
④ 在庫が過剰になっている
⑤ 設備投資・出店計画がうまくいっていない
(+)資金繰り表がなく、先々の動きが見えていない

薬局は地域の医療と健康を支える大切なインフラです。だからこそ、持続可能な経営を続けていただきたいと思っています。

「ウチは大丈夫かな」と少しでも気になった方、ぜひ一度お話しましょう。現在、調剤薬局のお金の流れを数字で理解するための1社限定セミナーを開催しています。ZOOMによるオンライン形式で、ご都合に合わせた日時・時間で進められます。他社の方が同席しないので、自社の状況を率直にお話しいただけます。

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