経理を任せ切りにすると、意図せず「粉飾」に見えてしまう理由

この記事を読むとわかること
・売上が下がっているのに売掛金が減らない、その違和感の正体
・経理を任せ切りにすることで、意図せず信頼を損なってしまう理由
・社長自身が持っておきたい「二割の数字感覚」とチェックの習慣
売上がかなり落ちているのに、売掛金がほとんど減っていない。決算書を見ていて、こういう違和感に気付けるでしょうか。実はこれ、見過ごすと大きな問題につながることがあります。
こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。薬局経営の現場を経験したのち、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。
先日、ある会社の経営診断でまさにこの場面に出くわしました。この記事では、その一件を通して、なぜ社長自身が自社の数字を見ておく必要があるのか、そして最低限どのくらいの数字感覚を持っておけばいいのかをお話しします。数字が苦手な方にこそ読んでいただきたい内容です。
売上が下がっているのに、売掛金が減らない
とある企業の経営診断で、貸借対照表をチェックしていたときのことです。売上がかなり落ちているのに、売掛金がほとんど減っていませんでした。
これはおかしいぞ、と思いました。売上が下がれば、それに連れて売掛金も減っていくのが自然です。それなのに減っていない。ということは、回収できる見込みがない売掛金、つまり不良債権のようなものがあるんじゃないか。最初はそう疑いました。
そこで経理担当者に確認してもらいました。取引先からの支払いが、きちんとされているかどうか。結果は、どこも問題ありませんでした。不良債権ではなかったんです。
じゃあ、なぜ売掛金が減らないのか。今度は社内の処理のほうを調べてもらうことにしました。
原因は、長年積み重なった経理のミスだった
調べてもらったところ、原因は単純な経理処理のミスでした。しかし、一度きりのものではなく、長年にわたって積もり積もっていたものです。その結果、実際とはずれた売掛金が残ってしまっていたことが分かりました。
会社の資産として、まだ結構な金額が入ってくるように見える。でも実際には、そのお金は入ってこない。それどころか、逆にこちらから払わなければならないお金があることまで発覚しました。
入ってくるはずに見えていたお金が、実は出ていくお金だった。なかなかインパクトのある話です。そして、意図してこうなったわけではありません。誰かが悪いことをしようとしたのではなく、日々の処理のズレが長い時間をかけて積み重なった結果、こうなってしまったんです。
なぜ、これがまずいのか
原因をたどれば、社長が経理を担当者や税理士に任せ切りにして、中身をチェックしていなかったことに行き着きます。では、それの何がまずいのか。角度を変えて、三つお話しします。
お金を貸す側から見ると、粉飾のように見えてしまう
まず、意図するしないにかかわらず、これは不正のように見えてしまいます。
売掛金があるということは、その分の入金予定があるということです。会社にそれだけの資産があることになる。ところが実際にはその資産がない。むしろ支払いのほうが発覚した。となると、話が変わってきます。
特に、お金を貸す側から見たらどうでしょうか。あるはずの資産がなかった。しかも逆に払うお金があった。本人にそのつもりがなくても、これは粉飾のように映りかねません。意図したかどうかは、外から見ている相手にはわからないからです。だからこそ、結果として信頼を損なうことになりかねないんです。
経営判断そのものを誤らせることがある
もうひとつ、そんなに多いわけではありませんが、経営判断を誤らせる可能性もあります。
資産があるように見えていると、社長は自社の経営体力を実際より大きく見積もってしまいます。「これだけ入ってくる予定がある」と思ってお金を使ってしまい、あとで足りなくなる。実際に、そういう例も見てきました。自社の実力を見誤る。これは怖いことです。
いざ修正しようとすると、簡単にはいかない
そして、これが見過ごせない点です。いざ修正しようとすると、数字が一気に大きく動きます。長年積もったズレを正すわけですから、その期の決算に大きな影響が出ます。
すると、金融機関への説明が難しくなります。急に財務内容が変わったように見えるからです。
さらに、修正の仕方によっては税額に関わってくる可能性もあります。ケースバイケースで断定はできませんが、その可能性がある以上、修正は税理士と綿密に打ち合わせしながら進める必要が出てきます。
加えて、融資の条件によっては「赤字を出せない」といった取り決めがある場合もあります。そうなると、修正の仕方自体が難しくなる。「じゃあこう直しましょう」と、ぱっと簡単に直すわけにはいかなくなることもあるんです。
だからこそ、社長自身が数字を見る習慣を
こうした事態を防ぐために、特別なことは必要ありません。
月に一回でもいいんです。お金の動き、利益の動き、資産の動き。こういったものを社長自身がチェックする癖をつける。それだけで、「あれ、売上は下がっているのに売掛金が変わっていないな、なんでだろう」と気付けるようになります。
修正が必要になったとき、どう直せばいいかを社長が全部わかっている必要はありません。そこは税理士と相談すればいい。でも、「なんかおかしいぞ」と気付けるだけの目は、持っておかなければいけません。
二割でいいから、数字を大枠で捉える力を
とはいえ、社長が数字の専門家になる必要はまったくありません。
私がお伝えしたいのは、二割ぐらいの財務知識でいいということです。細かい会計処理まで理解する必要はない。ざっくりとでも、会社の数字を大枠で捉える力があればいい。それだけで、見えてくるものが変わります。
逆に、「数字のことは全然わかりません」「そういうのは自分はいいんです」となってしまうと、それはそれで問題が出てきます。今回のようなズレに、誰も気付けなくなってしまうからです。
任せ切りにしないこと。そして、最低限の数字感覚を自分の中に持っておくこと。この二つが、結果として自分自身と会社を守ることにつながります。数字が苦手だという方こそ、まずは二割から始めてみませんか。
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