システムを入れたら私語が増えた?薬局の効率化で見落としがちな「浮いた時間の使い道」

この記事を読むとわかること
- 機械やシステムで浮いた時間が、うまく活用されない理由
- 大きな会社でも起きている、浮いた時間の使われ方の例
- やりたいことから逆算して、機械やシステムを入れる考え方
日々の業務を、少しでも効率よく進めたい。
そう考えている方も多いですよね。
そのために、さまざまな工夫をされていることと思います。
その一環として、機械を入れたり、設備投資をしたり、システムを導入したりすることもありますよね。
そんなときに、「1件5分かかっていた作業が、3分になります」「1日あたり30分の余裕が生まれます」と聞くと、期待がふくらみます。
仕事が楽になって、早く帰れるようになって、残業代も減るんじゃないか。
スタッフさんも喜んでくれるんじゃないか。
そんなふうに考えることはありませんか。
私も、そう考えたことがあります。
でも、実際に入れてみると、そうならないことも少なくなくて……。
こんにちは、天心堂L&Cコンサルティングの梅崎です。
元薬局経営者で、中小企業診断士・キャッシュフローコーチ・銀行融資診断士として、薬局の資金繰りをご支援しています。
時間に余裕ができたからといって、思っていたとおりの成果につながるとは限りません。
今回は、私自身の経験を振り返りながら、浮いた時間の使い方について考えてみます。
楽にはなったけど、私語が増えただけだった
私が薬局を経営していた頃、効率化のために、いろいろな機器やシステムを入れました。
電子薬歴の音声入力や、発注システムなどです。
発注システムは、それまで事務さんが電話やFAXでしていた発注を、ボタン1つでできるようにしました。
確かに、一つひとつの作業は手早く終わるようになりました。
でも、空いた時間が有効に活用されたかというと、そうでもなかったんですよね。
空いた時間に何をしていたかというと、別の仕事をするわけではなく、ゆるっと過ごしていました。
その時間が、仕事ではなくおしゃべりに費やされてしまうことも多かったように思います。
当時、管理薬剤師をしていた父からは「私語が増えたよね」と言われたこともあります。
発注システムも、楽になったのはよかったのですが、空いた時間をのんびり過ごして終わりになってしまったように記憶しています。
こうした苦い経験を、私はたびたびしています。
なぜ、浮いた時間が活用されないのか
なんでこうなってしまうんだろう、と考えたことがあります。
振り返ると、理由ははっきりしています。
浮いた時間に何をするのか、代わりの仕事を決めていなかったんですよね。
やることが決まっていなければ、スタッフさんがそれぞれ思うように過ごすのは当然のことです。
その結果、私語が増えたり、そこまで重要ではない仕事に時間が費やされていったりします。
例えば、今まで10の手間で完了させていた仕事に、20の手間をかけるようになる。
決してサボっているわけではないのですが、「そこまでしなくても」ということが起こるんですよね。
大きな会社でも同じことが起きている
先日、ITmedia NEWSで、DeNAの事例を取り上げた記事を読みました。
記事によると、DeNAはAIの活用で一部の業務の工数を大きく減らし、浮いた人手を新しい事業に振り向けようとしていたそうです。
ところが、その振り向けは思ったほど進んでいないとのことでした。
浮いた時間は、社員が「時間が空いたらやりたい」と思っていた仕事に流れていったそうです。
例えば、資料の精度を上げたり、より丁寧に確認したり。
もちろん、決して無駄な仕事ではありません。
ただ、会社が本来やってほしかった仕事ではないところに、時間が使われていたようなんですよね。
確かに、そういうこともあり得ますよね。
私の薬局の場合は私語に、DeNAでは丁寧すぎるくらいの仕事に。
使われ方は違いますが、浮いた時間が思っていたのとは違う形で使われていた、という点では同じかもしれません。
そして、いったんこうなってしまうと、社員本人が変えるのはなかなか難しいものです。
私語であれば、「では代わりに何をすればいいですか」となり、指示が出れば、その仕事をしてくれると思います。
でも、丁寧な仕事は少し事情が違います。
10の手間でよい仕事に20の手間をかけるのは、本人が「本当はここまでやりたかった」と思っていたことをやっているわけです。
ですから、上司や経営者から「ほかの仕事をしてほしい」と言われないと、自分ではなかなか変えづらい場面もあるのだと思います。
確かにそうだよな、と思いながら、この記事を読んでいました。
浮いた時間の使い道は、先に考えておく
では、どうすればよかったのでしょうか。
振り返ると、私にも、浮いた時間の使い方がうまくいった取り組みがありました。
私が薬局を経営していた当時は、薬剤師が投薬後に患者さんの服薬状況を確認する「服薬フォローアップ」が、ちょうど出始めた頃でした。
そこで私は、できるだけフォローアップの時間を取りたいと考えて、スタッフに浮いた時間を使って、患者さんへの電話でのフォローアップをしてもらうことにしました。
その結果、服薬フォローアップが進んでいったということもありました。
一方で、先ほどの私語の話のように、仕事が楽になって、のんびり過ごされてしまった経験もあります。
空いた時間を活かしきれず、そこでとどまってしまったこともありました。
たとえ少しの空き時間しかできなかったとしても、LINEを一つ出すとか、作業を一つ進めるとか、できることはあったのかもしれないと思います。
やりたいことから逆算する
機械やシステムを入れるときは、「作業が早く終わるかもしれない」という理由だけで決めるのではなく、作業が早く終わって空いた時間に、スタッフさんに何をしてもらうのかまで考えたうえで入れる必要があったのだと思います。
本当は、その時間の使い道を最初から決めておけるのが理想です。
ただ、実際に入れてみないと、どれだけ時間が空くかは分かりません。
だったら、順番を逆にしてみてはどうでしょうか。
こういうことをやりたい。
そのためには、これだけの時間を作りたい。
だから、このシステムを入れる。
この順番なら、作りたい時間が先に決まっているので、「どれだけ空くか分からない」と悩まずに済みます。
そう考えていけば、より良い形で機械やシステムを活かせたのかもしれないと、当時を振り返って思います。
やりたいことは、薬局の3年後、5年後の姿から考えるのがよいと思います。
自分の薬局をどうしていきたいのか。
そのために、今足りていない取り組みは何か。
今できる取り組みは何か。
例えば、こんなことです。
- 服薬フォローアップに、もっと時間を使いたい
- 在宅をもう少し増やしたい
- SNSの運用をしてみたい
- LINEで患者さんとの関係づくりをしたい
- LINEでの処方箋受付を案内して、処方箋の獲得につなげたい
ここまで、私自身の経験とDeNAの事例をもとに、機械やシステムで浮いた時間の使い方について考えてきました。
最後に、ポイントを整理しておきます。
まとめ
機械やシステムを入れると、確かに時間は生まれます。
でも、使い道を決めておかないと、浮いた時間は私語や、そこまでしなくてもいい仕事に費やされがちです。
だからこそ、先に「どうなりたいか」「何をやりたいか」を考え、そのための時間を作る手段として、機械やシステムを入れる。
私自身の経験を振り返っても、そのほうが導入の効果を実感しやすいのではないかと思います。
浮いた時間を、薬局の将来につながる仕事に回していきたいですね。
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