2026-10-22

薬局の在庫削減、何から始める?在庫金額・回転率と不動在庫の見直し

この記事を読むとわかること

  • 在庫の増加が、薬局の経営体力に与える影響
  • 在庫金額と回転率・回転日数から、変化を捉える方法
  • 高額薬や不動在庫を、廃棄になる前に見直す取り組み

「在庫を減らしたいけれど、患者さんに必要な薬を切らすわけにはいかない」

「気づくと、使われない薬が棚に残っている」

在庫の持ち方に悩む薬局経営者の方も、いらっしゃるのではないでしょうか。

こんにちは、天心堂L&Cコンサルティングの梅﨑です。

私自身も薬局経営を経験し、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営支援をしています。

今回は、必要な薬を確保しながら、在庫や廃棄を増やさないために、何から確認すればよいかを考えてみます。

在庫が増えると、薬局の経営体力が低下する

在庫は、現金が薬の形で寝ているようなものです。

仕入れた薬には、代金の支払いが伴います。

在庫に回したお金や、これからその支払いに充てるお金は、給与や家賃、借入金の返済に自由に使えません。

在庫を必要以上に抱えるほど、支払いに使えるお金が減り、薬局の経営体力は低下していきます。

人間でいえば、体力や免疫力が落ちている状態に似ています。

普段なら耐えられることでも、少し条件が変わっただけで調子を崩してしまう。

手元資金の余裕が少なくなると、急な支払いや収入の減少にも対応しづらくなります。

一方で、薬不足の中で在庫を確保したいという気持ちも、よく分かります。

私の妻も薬局で働いていますが、入りづらい薬があり、日々の対応が大変だという話をよく聞きます。

必要な薬をそろえる苦労は、重々承知しています。

だからこそ、一律に在庫を薄くするのではなく、必要以上に持っている薬、動かなくなった薬、経営への影響が大きい高額薬に注目したいのです。

面の処方箋を増やす取り組みと、在庫管理は両方必要

私も薬局を経営していた頃、面の処方箋の獲得に力を入れていました。

そのときに実感したのが、面の処方箋を増やすと、取り扱う薬や在庫も増えていくということです。

特に、一人の患者さんしか使わない薬は、その方が来なくなると、残った薬を使う見込みがなくなることがあります。

処方の変更によって、薬が残る場合もあるでしょう。

例えば、仕入価格が1箱3万円の薬を考えてみます。

一部を使った後、2万円分が残り、それが廃棄になったとします。

技術料を仮に処方箋1回当たり3,000円とすると、約7回分の技術料収入に相当する金額が失われることになります。

せっかく処方箋を増やしても、その一方で廃棄が出ていれば苦しいですよね。

「他の病院の処方箋も、ぜひ持ってきてください」とお声掛けすることは、続けていただきたい取り組みです。

それと合わせて、在庫を必要以上に増やさないこと、廃棄を減らすことにも取り組んでいきましょう。

来てくださった患者さんに、継続して選んでいただく工夫も欠かせません。

安全性を保ちながらお待たせしないこと、丁寧で親しみやすい接客、プライバシーへの配慮など、「次もこの薬局に来よう」と思っていただける対応を重ねていきたいですね。

平均在庫金額と回転率(または回転日数)を毎月追う

管理する項目を増やしすぎると、小規模な薬局では続けること自体が負担になります。

まずは、平均在庫金額と、在庫回転率・在庫回転日数のどちらかを、毎月確認するところから始めてみましょう。

原価ベースで月ごとに計算する場合は、次のようになります。

平均在庫金額=(月初在庫金額+月末在庫金額)÷2

在庫回転率(月間)=その月に使った薬の原価÷平均在庫金額

在庫回転日数=平均在庫金額÷その月に使った薬の原価×その月の日数

回転率は、その月に在庫が何回転したか。

回転日数は、その月の使用ペースに対して、何日分の在庫を持っていたかを表します。

回転日数は「その月の日数÷月間の回転率」でも求められます。

どちらも同じ状態を別の角度から見たものなので、分かりやすい方を選んでください。

仮の例として、月初在庫300万円、月末在庫340万円、その月に使った薬の原価640万円、30日の月で計算してみます。

  • 平均在庫金額=(300万円+340万円)÷2=320万円
  • 在庫回転率=640万円÷320万円=2.0回
  • 在庫回転日数=320万円÷640万円×30日=15日

この場合、その月に在庫が2回転し、使用ペースに対して15日分の在庫を持っていたことになります。

在庫金額と使った薬の金額は同じ評価基準にそろえ、毎回同じ方法で比較してください。

なお、その月に使った薬の原価と、その月の仕入額は別です。

「何回転なら適正」「何日分なら安全」と、一律に決めるのは難しいところです。

薬局ごとに、患者さんや取り扱う薬、供給の事情が違うからです。

まずは、薬局の状況に合わせて推移を見ていきます。

在庫金額が増えた。

回転率が下がった。

回転日数が長くなった。

変化があれば、「なぜ変わったのだろう」と理由を確認しましょう。

薬を多く持つようになったのか、処方が減ったのか、供給不安に備えて増やしたのか。

理由によって、必要な対応も変わります。

高額薬は、患者さんの状況に合わせて個別管理する

どこからを高額薬として重点管理するかは、それぞれの薬局で基準を決めていただくことになります。

特に、一人の患者さんしか使わない薬は、その方の来局予定と合わせて管理したいところです。

例えば、入荷の見通しを確認し、来局日の数日前に届くように発注する。

お薬をお渡ししたら、次回来局予定を確認する。

今後の処方予定がなくなった場合には、不要な発注や入荷を止められるようにしておく。

入荷に時間がかかる薬は、その事情も踏まえて手配します。

患者さんに必要な薬を確保しながら、大量の余剰が出ないように工夫するということです。

使っている発注システムなども活用し、薬局で無理なく続けられる方法を考えてみてください。

不動在庫は、こまめに確認して早めに動かす

在庫金額や回転の状況と合わせて、不動在庫も確認していきましょう。

一定期間動いていない薬が、どれくらいあるのか。

その薬の使用期限は、いつまでなのか。

今後、使う見込みはあるのか。

「何日間動いていなければ確認対象とするか」という基準を薬局で決め、該当する薬を洗い出します。

60日、90日、120日など、薬局の状況に合わせて考えてください。

使っているシステムに抽出機能があれば、それを活用すると負担を抑えられます。

複数店舗を経営しているなら、ほかの店舗で使えないか確認します。

また、その薬を必要とする知り合いの薬局に、買い取ってもらえないか相談する方法もあります。

店舗間の移動や他の薬局への医療用医薬品の譲渡には、品名・ロット番号・使用期限・数量などの記録と保存が求められます。

必要な記録をきちんとそろえたうえで、移動や譲渡を検討しましょう。

期限が迫ってから慌てるのではなく、使えるうちに、こまめに動かす。

廃棄を避け、仕入れに使ったお金をできるだけ回収するためにも、早めに取り組みたいですね。

不動在庫が増えていたり、廃棄が多かったりする場合は、金額と原因も確認します。

来局が途絶えた患者さんの薬が残っているのか、処方が変わったのか、使用量に対して多く持ちすぎていたのか。

残った薬への対応と合わせて、そもそもなぜ増えているのかを調べてみましょう。

在庫を抑えると、現場では以前より細かな気配りが必要になる場合もあります。

担当者に話を聞き、患者対応や日々の作業が、過剰にやりづらくなっていないかも気にかけてください。

まとめ

処方箋を増やし、継続して来局していただく。

そして、必要以上の在庫や廃棄を減らす。

両方に取り組み、患者さんへの対応と薬局の経営を支えていきましょう。

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