薬局の経営状況、スタッフにどう伝える?誤解を減らし協力につなげる3つのポイント

この記事を読むとわかること
- スタッフに経営の現状を伝えてもよいのか
- 現状を伝えるとき、誤解を減らすにはどうするか
- 薬局の理念とスタッフの生活を守るために、改善を一緒に進める考え方
調剤報酬の変化や経費の値上がりで、以前より利益が残りにくくなっている。
人件費を含めた経費や、仕事の進め方を見直したい。
新しい取り組みにも、スタッフの協力が必要だ。
そんなとき、どう話を切り出せばよいか、迷うことはありませんか。
経営が危ない薬局だと思われて、辞められてしまうかもしれない。
お金のことばかり考える経営者だと思われるかもしれない。
協力してもらいたいけれど、経営の現状を話してよいものか。
話すとしても、どうすれば誤解されずに理解してもらえるのか。
悩ましいですよね。
こんにちは、天心堂L&Cコンサルティングの梅﨑です。
今回は、スタッフと経営の現状を共有し、改善への協力をお願いする際の考え方を整理します。
スタッフが必要以上に深刻に受け止めないよう、どのように説明するかも、後ほどお伝えします。
経営の現状を伝えるなら、目的から共有する
スタッフに経営の現状を伝えること自体は、避ける必要はありません。
仕事の分担を変えたり、新しい取り組みを始めたりする理由を理解してもらううえで、現状の共有が役立つ場面があります。
ただ、決算書を見せたり、「利益が下がっている」と伝えたりするだけでは、協力してほしい理由まで伝わるとは限りません。
最初に共有したいのは、どんな薬局を続けたいのか、そのためになぜ改善が必要なのかです。
地域の患者さんを支える薬局を続けたい。
スタッフにも、長く働いてもらえる職場でありたい。
そのために、今の仕事の進め方を見直したい。
こうした理念やビジョンを実現するには、お金が必要です。
給与を払うにも、薬を仕入れるにも、設備やシステムを維持するにもお金がかかります。
理念やビジョンと、それを実現するためのお金は、薬局を続けるための両輪です。
経営の数字を確認するのも、薬局の未来やスタッフの生活を守るためです。
まず、その目的を共有してから、お金の話へ進みましょう。
会社の数字を見せる前に、家計から説明する
いきなり会社の数字を見せても、スタッフはどこに注目すればよいか分からないかもしれません。
そこで、身近な家計から説明してみてはいかがでしょうか。
家計では、収入から生活費を払い、住宅ローンなどを返済し、将来に備えてお金を残します。
会社にも、お金が入り、支払いをし、借入金を返済し、次のためにお金を残す流れがあります。
家計と会社には違いもありますが、「入ってきたお金をどう使い、いくら残すか」という点は共通しています。
この関係を「お金のブロックパズル」のような図で示すと、数字だけを並べるより全体像をつかみやすくなります。
薬局では、売上のすべてを給与や家賃に使えるわけではありません。
薬の仕入れなどにかかる原価を差し引いた粗利から、人件費やその他の経費を賄います。
給与や薬局の運営に使えるお金が、どこから生まれているのか。
この構造を理解してもらうと、自社の数字についても話を進めやすくなります。
「厳しい」だけで終わらせず、全体の中で現在地を示す
経営の現状を話すとき、「厳しい」「余裕がない」という言葉だけでは、その程度が伝わりません。
スタッフが、経営者の意図以上に深刻な状態を想像してしまうこともあります。
そこで、収支構造をいくつかの段階に分け、その中で自社がどこにいるかを示す方法があります。
例えば、6段階の全体像を見せて、「私たちの薬局は今、レベル3にいます。
次はレベル4を目指したいと考えています」と説明する形です。
自社の状態に応じて、現在地はレベル4や5になることもあるでしょう。
大事なのは、数字だけを伝えず、それぞれがどのような状態なのかも説明することです。
注目したいのは、利益が出ているかどうかに加えて、返済まで賄えるだけのキャッシュフローがあるかどうかです。
利益が出ていても、借入金の返済まで賄えるとは限りません。
例えば、利益は出ているものの、返済資金が不足している状態なら、返済を賄える状態が次の目標になります。
全体像を見せると、改善が必要な自社の状態より、さらに厳しい段階もあることが分かります。
「厳しいと聞いたけれど、最も厳しい段階にいるわけではないんだ」と、現状を落ち着いて捉えやすくなるでしょう。
同時に、今より安定した段階も示せるので、「ここから何を改善し、どこを目指すか」という話につなげられます。
例えば、次のような伝え方です。
「今は利益が出ていますが、事業から生まれる資金だけでは返済まで十分に賄えていません。
6段階で見ると、今はレベル3に当たります。
改善は必要ですが、最も厳しい段階にいるわけではありません。
まずは返済を賄えるレベル4を目指して、仕事の進め方を一緒に見直していきたいと考えています」
実際の説明では、自社の数字に合う段階を示してください。
現在地を全体の中で示し、改善の必要性と、目指せる先の両方を伝える。
その工夫が、「厳しい」という言葉から必要以上の不安が広がるのを防ぐ助けになります。
数字の話を、具体的な仕事の見直しにつなげる
スタッフの給与をできるだけ削らずに経営を改善したい。
そう考えるなら、粗利と人件費のバランスをどう改善するかが課題になります。
労働分配率は、そのバランスを見る指標の一つです。
ただ、割合だけを示しても、スタッフには何を変えればよいかが分かりません。
ここからは、具体的な仕事の話です。
薬剤師と事務スタッフの役割が曖昧になっていないか。
同じ確認を重ねていないか。
忙しい時間帯に、特定の人へ仕事が集中していないか。
経営者から改善案を示すとともに、スタッフにも、現場で困っていることや変えられそうなことを聞いてみます。
薬剤師から事務スタッフへ仕事を移す場合には、任せられる業務の範囲と条件も共有しましょう。
厚生労働省のいわゆる「04-02通知」では、薬剤師以外の者に実施させることが可能な業務の考え方が示されています。
例えば、PTPシート等で包装されたままの医薬品を、必要な数量だけ取り揃える作業です。
この作業には、薬剤師の指示や、実際に目が届く場所での実施などの条件があります。
品質や安全に影響がなく、判断の余地に乏しい機械的な作業であることも前提です。
薬剤師自身による最終確認に加え、手順書の整備や必要な研修なども求められます。
単に「事務スタッフへ任せてほしい」とお願いするだけでは、薬剤師が不安を感じることもあるでしょう。
何を任せられるのか、誰がどのように確認するのか、どんな手順や研修を用意するのか。
根拠と準備まで説明し、懸念があれば聞きながら検討します。
協力をお願いするときには、例えば次のように伝えてみてください。
「皆さんの給与をできるだけ削らず、この薬局を続けていきたいと思っています。
そのために、仕事の分担や進め方を見直したいです。
任せられる業務の範囲や確認方法も整理しながら、一緒に考えてもらえませんか」
経営者は数字から見える課題を伝え、スタッフは現場から見える課題を伝える。
その両方を持ち寄って、薬局に合う改善策を探していきます。
スタッフに協力をお願いするときは、何をしてほしいかに加えて、なぜ必要なのか、どこを目指すのかも伝えてみてください。
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