2026-05-18

数字が苦手でも大丈夫。「お金のブロックパズル」で薬局のお金の流れを見える化しよう

数字にまつわる経営判断、自信を持ってできていますか?「税理士には任せているけど、自分ではよくわからない」——そう感じている薬局経営者さんは、実はとても多いのです。

でも、経営判断は経営者自身がしなければなりません。根拠のある判断をするためには、お金の流れをザックリとでも自分でつかんでおく必要があります。

こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。薬局経営の現場を経験したのち、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。

今日ご紹介する「お金のブロックパズル」は、一枚の図で会社のお金の流れが一目でわかるフレームワークです。難しい会計の勉強をしなくても、この記事を読めば薬局のお金の構造がイメージできるようになります。

この記事を読むとわかること
・「お金のブロックパズル」とは何か、どこから生まれたのか
・薬局のお金の流れ(売上・変動費・粗利・固定費・利益)の全体像
・なぜ「利益を出すこと」が薬局の存続につながるのか

お金のブロックパズルとは?

お金のブロックパズルは、西順一郎氏が生み出したSTRAC表(MQ会計表)をもとに、キャッシュフローコーチ協会を創設した和仁達也氏が進化・発展させたフレームワークです。

目的は、会社のお金の流れをビジュアルで理解できるようにすること。お金の流れを視覚的に把握できることで、会社のお金の動きがイメージしやすくなり、根拠のある経営判断ができるようになります。

たとえば、今借入を検討しているとしますね。どれくらいまで借りられるか、返済するにはどれくらいの利益や売上が必要かを、根拠を持って判断できるようになります。また、経営判断も自信をもって決断できます。薬剤師さんやスタッフさんをあと何人雇用できるか、ボーナスをどれくらい出せるかなどの判断や、コスト改善などの決断もしやすくなります。

売上目標を設定するときも同じです。特に根拠もなく「昨年より10%アップ」と目標を定めて、なかなか社員には響きません。「なぜこの売上目標を達成する必要があるのか」という根拠や、「この売上目標を達成することで、社員や患者さんにどんな良いことがあるのか」という変化が示されていてこそ、社員も理解し、達成にこだわれるようになります。このように、明るいビジョンに基づいて、説得力のある数値目標を示すことができるようになるので、全社一丸となって目標達成に取り組む機運が生じます。

実際に、経営改善のご支援をした企業さんで、社員向けにお金のブロックパズルの講習会を開催したことがあります。ブロックパズルを使いながら、目指すべき売上目標やその理由を説明したところ、思った以上に良い反応を得られました。社員が皆、口々に改善策や収益アップ策を提案してきたのです。会社の現状を理解して協力してもらうことを意図して開催したのですが、それを上回る成果を得ることができました。

大切な経営判断は、お金と切り離すことができません。薬局経営者として、根拠を持って判断できる状態をつくっておく。その入口として、このフレームワークはとても有効です。

薬局のお金の流れの全体図を描いてみよう

では実際に、お金のブロックパズルを書いてみましょう。構造はとても簡単です。(今回は構造を理解することが目的なので、数字は仮の数値で進めます。)

白紙の紙を一枚用意してください。紙の左側に大きめの正方形を描いたら、その中に6本の線を引いていきます。引く位置はおおよそ次のとおりです。

正方形の左端から約1/4の位置に縦線①。上から約1/5の高さに横線②。真ん中に縦線③。下から約1/10の高さに横線④。右端から約1/4の位置に縦線⑤。右下エリアの下から約1/3の高さに横線⑥。

縦横あわせて6本の線を引くだけで、正方形の中に7つのボックスができます。数えてみてくださいね。このレイアウトが、お金のブロックパズルの土台になります。

会社で最も重要な数字「粗利」

7つのボックスにはそれぞれ意味があります。順番に説明していきます。

一番左の縦長のボックスは「売上」です。今回は仮置きで100(100万円のイメージ)と書いておきましょう。

その右隣、一番上の横長のボックスは「変動費」です。変動費とは、読んで字のごとく「変動する経費」のこと。売上が増減すると、それに連動して増えたり減ったりする費用です。より正確には、販売数量に比例して増減します。

調剤薬局の場合、処方せん枚数=販売数量と考えると分かりやすいですね。処方せんが増えれば増えるほど増える費用は何でしょうか?そう、薬の仕入れ代です。薬局経営においては、薬の仕入れ代が変動費にあたります。

売上から変動費を差し引いた残りを「粗利」といいます。正確には「限界利益」という言葉を使うのですが、普段あまり使わない言葉なので、私たちキャッシュフローコーチは分かりやすさを重視して「粗利」と呼んでいます。

粗利こそ、実質的に会社に入る収入。いわば会社の「手取り」です。私たちが手取り収入の中から生活費をやりくりするように、会社は粗利の中から様々な経費の支払いをしています。だからこそ、粗利率をしっかり把握しておくことが経営の土台になるわけです。粗利の重要性については、また改めてご説明しますね。

今回は変動費を20と仮置きしておきましょう。実際の調剤薬局では薬の仕入れ代の比率はもっと高いのですが、変動費の割合が大きすぎると他のボックスが小さくなって図が見づらくなるため、今回は構造理解を優先しています。調剤薬局の実態に合わせたブロックパズルは、また別の機会に作ってみたいと思います。

粗利から経費を引いたら、利益が出る

粗利の右隣のボックスが「固定費」です。変動費とは逆に、売上の増減に関わらず一定額がかかる費用のことです。薬局でいえば、家賃・電気代・薬剤師さんやスタッフさんの人件費などがこれにあたります。

固定費は大きく2種類に分かれます。固定費の右隣に並ぶ2つのボックスが、その内訳を表しています。

上のボックスが「人件費」です。社員の給料やボーナス、法定福利費、福利厚生費、退職金、そして経営者の役員報酬も含まれます。調剤薬局は人件費の割合が高い業種です。粗利に占める人件費の割合を「労働分配率」として記載しています。人件費や労働分配率については、また別途解説しますね。

人件費を除いた残りが「その他の固定費」です。

そして、粗利から固定費をすべて引いた残りが「利益」です。資金繰りのことを考えると、この利益をしっかり残す仕組みが重要になります。

ただし、この「利益」がそのまま全部会社に残るお金かというと、そうではありません。ここからさらに出ていくお金があります。だいぶ長くなってきたので、続きはまた次回ご説明しますね。

なぜ利益が必要かを説明できないと…

「利益を出さなければならない」という話をスタッフにすると、「社長がお金儲けのために言っている」とか、「私利私欲で薬局をやっている」と受け取られることがあります。本当はそんな理由ではないのですが、薬局のお金の流れについて理解していないと、「利益を増やす=社長が私腹を肥やすため」と思われることがありますね。

SNS等を見ていても、「利益=社長のポケットマネー」くらいに思っている人が意外と多くてビックリします。数字が苦手な方はそう感じやすいかもしれません。特に医療分野は「医療はお金じゃない!」と思う方もいるので利益の話はしづらいですが、経営者としては会社に私財を投じてまで給料を払い、借入金を返済している場合もあるので、切ないところですね。

さて、従業員が利益=社長が私腹を肥やしていると勘違いしている理由は明確です。薬局のお金の流れを理解していないから。なぜ利益が必要で、利益が何にどう使われているかを知らないからです。お金の話は学校でほとんど教えてもらえないので、知らなくて当然でもあります。

逆にいえば、会社のお金の流れを理解できれば、利益を出すことが自分たちの生活や薬局の存続にとって不可欠だと理解しやすくなります。薬局は地域の医療と健康を守るインフラです。存続し続けるためには、利益を出し続ける必要がある。そもそも人件費は粗利の中から支払われているので、それを理解してもらうだけでも経営者と社員の意識のずれが少し埋まります。

お金のブロックパズルを使ってビジュアルで直感的に理解できるようにするのは、意識のずれを修正するための有効な手段のひとつです。数字が苦手な方でも、見てわかる形になっていれば取り組みやすいですよね。

ただ、従業員に分かってもらう前に、まずは薬局経営者自身が、薬局のお金の流れをザックリと理解できるようにしましょう。そうでなければ、従業員に自信をもって数字の話ができないですから。

次回は、利益からさらにお金が出ていく流れをご説明して、会社のお金の流れの全体像を完成させます。引き続き、よろしければお付き合いください。

私たちは「良い医療は良い経営から」をモットーに、地域で頑張る中小調剤薬局の経営や資金繰りのご支援をしています。売上や利益、資金繰り、人材育成などでお悩みでしたら、お気軽にご相談ください。

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顧問契約等を強要するようなことはありませんのでご安心くださいね。

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