「借りられる状態」を保つために。経営者が意識したい債務者区分の話

こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。薬局経営の現場を経験したのち、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。
今日は「債務者区分」についてお話しします。
私は現在、銀行融資診断士(民間資格)の勉強を進めています。事業再生だけでなく、設備投資や事業拡大といった前向きな場面での融資支援もできるようになりたいと思ってのことです。その勉強の中で、この「債務者区分」という考え方が、どんな場面でも繰り返し登場してくることを実感しています。
「融資の話は、うちにはまだ関係ない」と思っている薬局経営者の方にも、ぜひ一度知っておいていただきたいテーマです。
この記事を読むとわかること
- 金融機関が企業をどう評価しているかの仕組み(債務者区分)
- 各区分の具体的な判断基準と、融資への影響
- 「正常先」を維持するために経営者が意識すべきポイント
債務者区分とは何か
金融機関は、貸し付けたお金(自己資産)が健全な状態にあるかどうかを定期的に査定しています。これを「自己査定」と呼びます。預金者から預かったお金を貸し付けている以上、その貸付金が適切な状態にあるかを把握し、必要に応じて貸倒引当金をきちんと積んでおくことが求められます。金融機関が安全な経営を続けるための、重要な内部管理の仕組みです。
この自己査定の結果、融資先の企業は「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の5つに分類されます。正常先が最も良い評価で、下に行くほど状況が厳しくなります。さらに、要注意先の中に「要管理先」というもう一段階の区分があります。金融機関ごとに審査の基準は異なりますので、自社が必ずどこに当てはまるとは断言できません。ただ、大まかな目安として把握しておくことには十分意味があります。
正常先と認められるための主な条件
正常先と評価されるためには、いくつかの条件をクリアしている必要があります。一般的に見ておくべき主なポイントは以下の通りです。
まず、債務超過になっていないこと。次に、繰越欠損金がないこと。そして、営業利益が2期連続で赤字になっていないこと。さらに、債務償還年数(今ある借入金を返し終えるまでの年数)が10年以内であること。これらを満たしていると、正常先として評価されやすくなります。
「営業利益が2期連続赤字はよくない」というのは、単に業績が悪いという話だけではありません。金融機関における評価ランクが下がり、融資の受けやすさにも直接影響してくるということです。資金繰りが苦しくなる原因の一つに、こういった評価の変化が関係していることもあります。
要注意先・要管理先はどう違うのか
要注意先は、文字通り「注意が必要な状態」です。繰越欠損金があったり、営業利益が2期連続で赤字になっていたり、返済が一部滞っていたり、債務償還年数が10年超20年以内になっていたりすると、この区分に分類されやすくなります。
要注意先の段階では、融資の可能性が完全に閉ざされるわけではありません。ただ、ここから一段下がって「要管理先」になると、状況は大きく変わります。
要管理先とは、元金の返済を止める、融資期間を延長するなど、いわゆるリスケ(返済条件の変更)をしている企業が該当します。要管理先になると、新規融資はかなり難しくなります。「設備を入れ替えたい」「もう一店舗出したい」といった資金需要があっても、新たな資金の用立ては難しい状況になります。
リスケは経営を立て直すための大事な手段ですが、その後の融資に影響することも頭に入れておく必要があります。
破綻懸念先以下になると
破綻懸念先は、さらに深刻な状態です。たとえば2期連続で実質的な債務超過に陥っていたり、その解消に5年以上かかると見込まれたり、債務償還年数が20年以上になっていたりするケースが該当します。元本や利息の支払いが滞っているケースもここに入ります。
また、経営改善計画書を提出していても、その目標達成率が80%を下回っている場合は、破綻懸念先とみなされることがあります。
リスケをして支援を受けられると、「ひとまず返済を待ってもらえた」と安心される経営者さんは多いです。ただ、実はそこからが本当のスタートです。計画書に書いた内容をきちんと実行し、約束した数字を積み上げていくことが不可欠です。達成率が低いままでは「計画通りに動ける会社ではない」と判断されてしまいます。計画書を提出して承認されることがゴールではなく、その後の実績こそが問われているということは、ぜひ頭に入れておいていただければと思います。
実質破綻先・破綻先は、それ以上に厳しい状態です。ここまで来ると、金融機関との関係は通常の融資交渉の話ではなくなってきます。
自社の「ポジション」を知っておく意味
事業再生の支援をしていると、自社が金融機関からどう見られているかを意識していない経営者さんに出会うことがあります。融資の増額、返済の先延ばし、条件変更。そういった要望が当然応じてもらえるものだと思っておられる方もいるんですよね。
ただ、金融機関は預金者からお預かりしたお金を貸し付けて収益を上げています。経営者側の都合だけで動けるわけではありません。金融機関が「貸せる状態」と判断できるよう、こちら側でもきちんと経営状態を整えておくことが、銀行との信頼関係を築く上での基本です。
債務超過の状態では融資の相談を受けないというコンサルタントもいると聞いたことがあります。それだけ「借りられる状態かどうか」という点は、金融機関にとって重要な判断軸になっているということでもあります。
常に債務者区分を意識しておく必要はありません。ただ、金融機関と良いお付き合いをするためには、やはり金融機関から見て「健全な経営をしている会社だ」と思えるような数字を維持しておくことが大事です。
ビジョンを実現するには、設備投資や事業拡大のための資金が必要になることがあります。そのとき、金融機関との信頼関係があるかどうかで、動ける選択肢の幅が大きく変わります。常日頃から数字に気を配り、経営状態を健全に保っておくこと。それが、将来のビジョン実現にもつながっていくと私は思っています。
「自社の状態が気になる」「金融機関との付き合い方について相談したい」という方は、ぜひ無料相談をご活用ください。一緒に確認していきましょう。
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