2026年改定対応に動き出す前に、資金繰りを確認してみませんか

この記事を読むとわかること
・2026年6月の調剤報酬改定で、資金繰りが厳しくなるかも
・対応策に取り組む際に見落とされがちな「資金のタイムラグ」とは何か
・キャッシュが減り始めたときにやってほしいこと
こんにちは。元薬局経営者で中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。現在は認定経営革新等支援機関として、調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っています。
「医療モール薬局」苦難——日経新聞が伝えた現実
先日、こんな記事が日本経済新聞に掲載されました。
「調剤報酬改定で『医療モール薬局』苦難 収益力低下、M&A加速へ」(2026年3月27日)
医療モール内に立地する薬局への調剤報酬が、2026年6月の改定で大幅に引き下げられる。業界大手でさえ「続ける意味があるのか」と頭を抱えるほどの影響だと、記事は伝えています。
医療モールのビジネスモデルが揺らいでいる背景には、集中率の計算ルールの変更があります。これまでモール内の各クリニックは「別々の医療機関」として扱われてきましたが、6月以降は「1つの医療機関」とみなされるようになります。その結果、処方箋集中率が一気に高まり、調剤基本料の区分が下がる薬局が続出すると見られています。
実際、知人の薬局経営者や経営幹部の話を聞いても、皆さん「どれだけ影響が出るか……」「どう対応すべきか、頭が痛い」と言っていました。
今回の改定で影響を受けるのは、医療モールだけではありませんよね。
皆さんご存じの通り、後発医薬品の使用割合が85%に届いていない薬局も大きな影響を受ける可能性があります。これまで独立した加算として算定できていた後発医薬品調剤体制加算は廃止・統合され、新しい加算の算定には85%以上が必須要件となります。これまで地域支援体制加算を算定できていた薬局でも、後発品の割合が85%に届いていなければ取れなくなるケースが出てきます。収益への影響はかなり大きいですよね。
また、14日処方など短期間の処方が多い薬局も、今回の影響を受けやすいですよね。調剤管理料の点数体系が2区分へ整理される結果、1枚あたりの技術料収入が減ってしまうのは痛手です。診療科や在宅の応需枚数によっては、やはり大きな影響が出そうです。
収益が減るのは、いつから?
今回の改定は2026年6月1日施行です。
6月に新しい調剤報酬が始まります。6月末で締めて、入金されるのは8月。つまり、手元に入ってくるお金が実際に減り始めるのは、8月頃からということになります。経過措置があるものは、影響が出るのはもっと後になります。この辺りは調剤報酬改定の内容をご確認ください。
「まだ先の話」と感じるかもしれません。でも、ここからが大事なところです。
投資をしても、収益が戻るまでには時間がかかる
収益が減るとわかれば、何か手を打とうと考えますよね。取り組みの方向性はさまざまです。
・在宅への参入
・OTC・一般商品の販売強化
・加算の算定率アップ
・LINEなどを活用した集患強化
ただ、どの取り組みも、すぐに収益が増えるわけではありません。設備や仕組みへの投資、スタッフの育成、新しいサービスの立ち上げ——そこから利用者に認知され、実績が積み上がり、収益に反映されるまでには、一定の時間がかかります。
特に、実績要件を問われる加算への対応は、かなり長い時間がかかる可能性があります。「やります」と決めてからすぐに算定できるわけではなく、実績を積み上げるまでに相当の期間を要することもあります。
8月頃から収益が減り始める。対応策に投資をすれば、さらにお金が出ていく。成果が出るのはもっと先。その間、会社のキャッシュは減り続ける可能性があります。
いきなり大きな影響が出るものもあれば、経過措置などでしばらく猶予期間があるものもあります。でも、何か手を打たなければいつか厳しくなるのは間違いないでしょう。
個人資産を入れる前に、まず金融機関対応を
会社のお金が減ってきたとき、多くの経営者は自分のお金を会社に入れることを考えます。場合によっては、個人で借り入れをして会社に資金を投入しているケースも多々あります。
でも、その前にやるべきことがあります。
まず真っ先に検討してほしいのは、金融機関対応です。
新たな取り組みへの投資資金を借りることも選択肢のひとつです。また、現在の借入の返済条件を見直すことも、れっきとした対応策のひとつです。毎月の返済額を減らしてもらう、元金の返済を一定期間止めてもらうといった「条件変更」によって、手元資金を確保しながら立て直しを図ることができます。もちろん条件変更にはメリットもデメリットもありますが、個人資産の投入より先に検討すべきことです。
個人資産を投入してしまった後では、やれることはどんどん減っていきます。経営を改善するにもお金が必要で、その間をつなぐ資金もなんとかしなければならない。そういう状況になってからでは、打てる手が本当に限られてしまいます。
まだ改定の影響が少ないうちに借入等の対応をしておき、早期に改善に取り組む方が、結果的に選択肢を広く持てます。
特に制度ビジネスである調剤薬局の場合、収益改善の取り組みが実績として反映されるまでには、非常に長い時間がかかります。キャッシュが減り始めたと感じた段階で、早めに動くことが大切です。
まず、先々の資金繰りを確認してみましょう
日々の資金の動きが見えている状態になっていますか?先々のお金の増減を、自分で確認できる体制が取れていますか?
実は、調剤薬局は資金繰り表を作りやすい業種のひとつです。月々の固定費はそれほど大きく変動しませんし、売上のうち患者さんからの一部負担金としていつ入ってくるか、保険請求分がいつ入金されるかは、ある程度見通しが立てやすいですよね。仕入れについても、処方内容や患者構成が大きく変わらなければ、昨年と同程度の薬剤費がかかると想定できます。
こうした特性を活かして、月々の資金繰り表を作ってみることをおすすめします。いつ、どれくらいの入金があって、どれくらいのお金が出ていくのか。税金や借入返済がいつ、いくらあるのか。そういった一年間のお金の流れを見える化しておくと、先々の不安が具体的な数字に変わります。
そして、資金繰り表があると、金融機関との対応もぐっとやりやすくなります。「これだけの期間、これだけの資金が必要です」と説明できるからです。
そこに少しでも不安を感じているなら、まずは現状の課題を一緒に整理するところから始めましょう。お気軽にご相談ください。
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