2026-03-09

薬局経営で見るべきは売上より粗利|経営を安定させるために、まずすべきこと

この記事を読むとわかること

  • 粗利(売上総利益)の正しい意味と、なぜ売上より重要なのか
  • 調剤薬局における粗利の計算方法と、自店舗の粗利率を把握する方法
  • 粗利率が経営の安定性を左右する具体的な理由と数値例
  • 薬局が粗利を改善するための2つの実践的な方法と効果試算
  • 利益確保が地域医療の継続につながるメカニズム

「売上は順調に伸びているのに、なぜか手元にお金が残らない…」

薬局経営をされている方の中には、こんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。

こんにちは。中小企業診断士でキャッシュフローコーチ®の梅崎です。
私自身も薬局経営を経験し、現在は調剤薬局の経営支援や、様々な業種の企業の経営改善をサポートしています。

さて、日々たくさんのご相談をお受けしていると、多くの経営者さんが「売上」は気にしているけど、それ以上に重要な数字に目を向けていないことに気づきます。
その数字とは「売上総利益」、いわゆる「粗利」です。

実は、売上がいくら増えても、粗利が確保できていなければ経営は安定しません。今回は、粗利がなぜ売上以上に重要なのか、そして粗利を改善するための具体的な方法について解説します。

粗利とは?調剤薬局での具体的な意味

まず、粗利の定義から確認しましょう。

粗利=売上−変動費
※本当は粗利ではなく限界利益と言いますが、多くの方は馴染みがない言葉なので、ここでは粗利としています。

変動費とは、販売数量に比例して増減する経費のことです。
調剤薬局でいえば、最も大きな変動費は「医薬品の仕入れ代」になります。

具体例で考えてみましょう。

ある処方せんの単価が1万円で、そのうち薬代(仕入原価)が7,000円だったとします。
処方せんの受付枚数が100枚なら薬の仕入れは70万円、200枚なら140万円というように、受付枚数(販売数量)に比例して薬の仕入れ代も増加します。
このように、「販売数量と連動して変化する経費」が変動費です。

粗利率を計算してみよう

粗利と合わせて重要なのが「粗利率」です。

粗利率=粗利÷売上×100(%)

先ほどの例でいえば、売上1万円からお薬の仕入代7,000円を引いた粗利は3,000円。
粗利率は30%ということになります。

あなたの薬局の粗利率は何パーセントでしょうか?
一度計算してみてください。
なぜなら、この粗利はとても重要な数字だからです。

なぜ粗利が売上より重要なのか?

粗利が売上よりも重要な理由、それはシンプルです。

粗利こそが、あなたの薬局の「実質的な収入」だから。

一見すると、売上が「稼いだお金」のように見えますが、実は違います。
売上として入ってくるお金のうち、医薬品の仕入れ代は薬局を素通りして医薬品卸へ支払われます。
ですから、薬局の手元に実質的に残るのは粗利の部分だけなのです。

サラリーマンの家計で考えると分かりやすいかもしれません。

給与明細を見たとき、「総支給額30万円」と書かれていても、実際に使えるお金は手取り額の24万円ですよね。
税金や社会保険料は天引きされて、手元には残りません。

薬局にとっての「手取り」が粗利なのです。

そして、サラリーマンが手取り収入から食費や家賃を支払うように、薬局も粗利の中から様々な経費を支払って経営を維持しています。

粗利で何を支払うのか?固定費の理解

粗利の中から支払う経費を「固定費」といいます。
固定費は、販売数量に関係なく毎月一定額が発生する経費です。

調剤薬局における主な固定費は以下の通りです。

  • 人件費(薬剤師やスタッフの給与)← 最も大きい
  • 店舗の家賃
  • 光熱費(電気・ガス・水道)
  • 電子薬歴やレセコン、分包機などのリース料
  • 各種保険料
  • 事務用品費、通信費など

この中で最も大きな割合を占めるのが人件費です。
一般的に、調剤薬局では粗利の60〜70%程度が人件費として支払われています。

つまり、粗利が少なければ、人件費などの固定費を支払った後に残る利益も少なくなるということです。

粗利率の重要性|売上が増えても安心できない理由

薬局に限らない話ですが、経営者の中には、粗利ではなく売上を重視する方が少なくありません。
確かに売上は分かりやすい指標です。
一方、粗利はひと手間かかります。

しかし、売上だけを見ていては、経営の実態が見えません。

分かりやすいように、極端な例をお示ししますね。

【A薬局】

  • 月商:1億円
  • 粗利:1,000万円
  • 粗利率:10%

【B薬局】

  • 月商:8,000万円
  • 粗利:2,000万円
  • 粗利率:25%

売上だけを見ればA薬局の方が優れているように見えます。
しかし、実質的な「手取り収入」はB薬局の方が2倍も多いのです。

固定費(人件費や家賃など)を同じと仮定すれば、B薬局の方がはるかに多くの利益を残すことができます。
粗利が多いということは、それだけ経営に余裕があり、設備投資や人材育成にお金を回せるということです。

お金のブロックパズル

粗利率が高ければ高いほど、経営は安定します。

もちろん、調剤薬局はお金だけを目的に営業するものではありません。
しかし、安定した経営を続けることこそが、地域医療のインフラを維持することにつながります。
だからこそ、粗利を重視した経営が必要なのです。

調剤薬局が粗利を上げる2つの視点

では、調剤薬局が粗利を高めるために何ができるのでしょうか。
基本的には2つのアプローチがあります。

1. 薬価差益を大きくする

薬価は国が決めるため、薬局側でコントロールできるのは仕入れ値です。
仕入れ価格を改善することで、粗利を増やすことができます。

具体的な改善方法:

  • 卸との仕入価格交渉:定期的に卸会社と交渉を行い、仕入率を見直す
  • 医薬品の共同購入:共同購入やボランタリーチェーンに加盟し、スケールメリットを活かす
  • 在庫管理の徹底:廃棄ロスを最小限に抑える
  • 後発医薬品の活用:仕入れ価格と薬価差益のバランスを見直す

改善効果の試算例:

月商1,000万円の薬局で、医薬品原価が700万円(原価率70%)だったとします。

もし仕入価格を1%改善できれば、

  • 改善前の仕入:700万円
  • 改善後の仕入:693万円(700万円×0.99)
  • 粗利の増加:7万円/月

年間では84万円もの粗利改善になります。
たった1%の改善でも、積み重なれば大きな効果を生むのです。

2. 技術料や加算をしっかり算定する

もう一つの方法は、提供した医療サービスに見合った技術料や加算をきちんと算定することです。

付加価値の高い医療を提供しているのに、加算を算定していないケースは意外とあります。
これは実質的に「値引き」と同じ。

適切な対価を得ることは、決して悪いことではありません。
むしろ、持続可能な医療提供体制を維持するために必要不可欠なのです。

経営の安定=地域医療の安定

「利益を出しても結局は経営者の懐に入るだけでは?」

従業員さんの中には、そう思っている方がいることもあります。
でも、それは誤解です。

経営者の役員報酬は、すでに固定費の中の人件費として計上されています。
利益は粗利から固定費を引いた後に残るものですから、利益が増えたからといって経営者の個人的な収入が直接増えるわけではありません。

では、なぜ経営者は利益のことを考えなければならないのでしょうか?

それは、会社を継続させるために利益が必要だからです。

利益から何を支払うのか:

  • 法人税などの税金
  • 借入金の返済
  • 設備の更新・投資
  • 災害などの不測の事態への備え

など、利益から払わなければならないものはたくさんあります。

つまり、利益は将来への投資であり、事業を継続するための備えの元手になるものなのです。

安定して薬局を経営することは、単に一つの会社を維持することではありません。地域の医療インフラを守り、地域住民の健康を支え続けることを意味します。

良い経営があってこそ、良い医療を継続的に提供できる。これは間違いない事実です。

まとめ:今日から始める粗利改善

薬局経営において、売上という数字だけに目を奪われてはいけません。真に注目すべきは「粗利」であり「粗利率」です。
まずは月々の粗利額と粗利率をチェックすることから始めましょう。

粗利を意識した経営は、決して「儲け主義」ではありません。
地域医療を持続可能にするための、経営者としての責任なのです。

私たちは「良い医療は良い経営から」をモットーに、地域で頑張る中小調剤薬局の経営を支援しています。
売上や利益、資金繰り、人材育成などでお悩みであれば、お気軽にご相談ください。

あなたの薬局が、地域になくてはならない存在であり続けるために。
その一歩を、今日から踏み出しませんか?

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