2026-02-19

良い薬局づくりに欠かせないのは健全経営─プライバシー配慮とキャッシュフローの話

昨年末、福岡国際会議場で開催された、アトル総合医療フェア2025に参加してきました。
この医療フェアは毎年参加していて、参加するたびに新しい気付きや出会いの機会をいただいています。
特に今年はセミナーが秀逸で、大きく頷きながら聞いていました。

「調剤薬局はプライバシーに配慮して!」という患者さんの声

内容としては、来局された患者さんにプライバシー問題。
以前から課題として取り上げられているプライバシーについて、フリーアナウンサーの方や薬局経営者、大学教授などがパネリストとして議論する形式でした。

重い病気に罹患されたフリーアナウンサーの方の経験談で、
1.薬局内でフルネームを呼ばれる(著名人なので、皆に病気を知られてしまう)
2.重い病気を宣告されたばかりで心の準備が出来ていないのに、薬剤師はズケズケと無遠慮に踏み込んでくる
3.皆に聞こえるようなところで薬の話をされる
等の問題について、これからの薬局や薬剤師はどのように対処すべきか、というのがメインテーマ。

プライバシー配慮、調剤薬局の対応は必須かも

プライバシーへの配慮については様々なご意見があると思います。
が、今回はちょっと違う側面を取り上げてみたいと思います。
それは、「良い薬局を作るにも、健全経営が欠かせない」ということ。

良い薬局を目指すなら、もちろん投薬時のプライバシーにも配慮したいですよね。
患者さんの病名や薬が丸聞こえになって良いはずはなく、プライバシーに配慮された空間を用意したいところ。
アトル医療フェアでも半個室型の服薬カウンターが3つ展示されており、多くの方が見学していました。

導入価格を聞いてみたところ、「明確には決まっていないけれど、数百万はするでしょう」とのこと。
1つで数百万なのか、3つで数百万なのかは分かりませんでしたが、結構なお値段がかかるのは間違いなさそう。
「服薬カウンターに数百万はかけられないかな」と言いたくなるところですが、これから先の経営を見据えると、簡単に切り捨てられる選択肢ではないかもしれません。

というのも、今後サービス品質の差が薬局の生存に直結する可能性があるからです。

高付加価値化が「必要とされる調剤薬局」への道

パネリストの一人である岡田浩先生が、議論の中でこんな話を紹介されていました。
以前、ヨーロッパで薬剤師不要論が活発になった時期があるそうです。
調剤の機械化・IT化が進んだことや医療費の高騰などを背景に、薬剤師は単に「お薬を出すだけ」だから不要だという議論が起きたとのこと。

その中で、薬剤師は単に薬を出すだけの人から、より専門性の高い仕事をすることで生き残りを図りました。
そこでは様々な取組がされたのでしょうが、取組の一つに、プライバシーへの配慮があったそうです。

例えば薬物依存への対応などの際、周りに丸聞こえの状態だったら、依存症についての相談なんかできませんよね。
なので薬局薬剤師の生き残り戦略の一つに、プライバシー配慮があったわけです。

プライバシー配慮へのニーズはますます高まる

今、医療費が高騰し医療・福祉の負担が重くなっていることを背景に、日本も薬局に対して厳しい意見が寄せられることもありますよね。
それらの声に対し、専門性を高めることで付加価値を高めようという流れになっていると思います。
となると、プライバシー配慮への投資も不可欠になっていくでしょう。

パネリストの一人である医師の藤田先生も、以前は病院でもプライバシー配慮されていないところがあったが、今はほかの患者さんに病気の話が聞こえるような病院はほぼ見かけないとおっしゃっていました。

確かにその通りですね。
私の小さい頃は待合室と診察室の間は、薄いカーテンで仕切られているだけだったりしましたが、今は個室になっているのが当たり前ですよね。

そういえば、歯医者さんも今は個室ばかりですね。
薬局もいずれ、「病気のことを話すのだから個室で当たり前」という時代になるのでしょう。

薬局のビジョン実現をキャッシュフローが支える

さて、プライバシーに配慮するため、半個室タイプの投薬カウンターを導入しようとしたとします。
仮に1ブース3百万円、3つで9百万円かかるとします。
(※投薬カウンターの値段は分からないので仮置きです)
これほどのキャッシュを持っていないとすると、時間をかけて貯めるか、融資を受けてカウンターを設置することになります。

財務状況が悪いと、自腹で多額の投資はできません。
では融資を受けられるかというと、財務状況に悪いところに簡単に貸してくれる金融機関は少ないでしょう。
結局、資金に乏しい薬局は付加価値を高めきれず、時代の波に押し流されることになりかねません。

逆に、日ごろから健全経営を意識してキャッシュをしっかり確保し、適切な投資を行える薬局は、付加価値が高く選ばれる薬局に近づくのだと思います。
もちろん、投薬カウンターなどのハード面だけでなく、患者さんへの気遣いなどのソフト面(教育)も重要です。
が、ソフト面だけではカバーしきれない物理的な問題については、適切な投資が必要で、そのためには原資を確保しなくてはなりません。

普段から「これからの薬局はどんな姿であるべきか」「自社はどんな薬局を目指したいか」を明確にすること。
「その薬局をつくるにはどれくらいのお金がいるか」を考えてみること。
そのお金をどう用意するかを検討し、日々の経営に取り組むこと。
その積み重ねが、「選ばれる薬局」になるかどうかを分けるのかもしれない、と思いました。

アトル総合医療フェアは毎年素晴らしい知見を得ることができますが、今年は特に学びがありました。
来年も楽しみです!

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