「やっといて」では進まない。任せた取り組みを前に動かすリーダーの3つの役割

会議で「SNSをやってみよう」と決めたものの、なかなか進まない。従業員に任せたはずなのに、いつの間にか止まっている。「どんな内容を発信すればいいですか?」と聞かれても、うまく答えられない。
そんな経験はないでしょうか。
今回は、新しい取り組みを従業員に任せるとき、経営者はどのように関わればいいのかについて考えてみます。
SNSを例にお話ししますが、業務改善や新しいサービス、社内プロジェクトなど、さまざまな場面に応用できる考え方だと思います。
こんにちは。中小企業診断士・キャッシュフローコーチの梅崎です。
経営改善のご支援をしていると、「じゃあ、これに取り組んでみましょう」と、新しい取り組みが決まることがあります。
よくあるのが、「SNSで情報発信をしてみましょう」というものです。
SNSであれば、必ずしも経営者自身が担当する必要はありません。「では、従業員さんに担当してもらいましょう」と決めることもしばしば。
ところが、しばらくしてお会いしたときに、「SNS、進んでいますか?」と聞いてみると、なかなか進んでいないことがあります。
経営者としても、
・従業員にどうやらせればいいのか分からない
・「何を発信すればいいですか?」と聞かれても答えられない
・一応発信してくれているけれど、思っていたものと少し違う
といった悩みを抱えています。
なかでも多いと感じるのが、そもそも最初の一歩がなかなか踏み出せていないケースです。
これはSNSに限った話ではありません。
会社として新しいことを始めようとしたときに、「任せたつもりなのに進まない」「従業員の手が止まってしまう」ということは、よくあります。
私は薬局経営の現場を経験したのち、現在は調剤薬局をはじめとする中小企業の経営改善支援を行っていますが、こうした場面には何度も出会ってきました。
では、どうすればいいのでしょうか。
そんなことを考えていたときに、キャッシュフローコーチの創設者である和仁先生のブログで、参考になる考え方を見つけました。
今回のような「新しい取り組みを社員に任せる場面」にも活用できる考え方だと思いましたので、ご紹介します。
任せるときに、リーダーが果たす3つの役割
和仁先生のブログでは、ある歯科医院で、「SNS活用をスタッフにうまく任せるにはどうすればいいか?」という相談を受けた事例が紹介されていました。
院長としては、あまり細かく口出しをせず、スタッフ自身に考えて挑戦してほしい。
一方で、完全に任せきりにしてしまうと、思うような成果にはつながらない。
そんなジレンマを抱えていた院長に対して、和仁先生が示していたのが、リーダーが果たす3つの役割です。
1.お手本を示す
まずは、「どのような状態を目指しているのか」を見せることです。
SNSであれば、「こういう発信ができるといい」という具体的なお手本を示します。
2.見るポイントを伝える
次に、どこに注目してほしいのかを伝えることです。
たとえばSNSなら、
・どんな内容を選んでほしいのか
・写真はどのようなものがいいのか
・どんな雰囲気で伝えてほしいのか
といったポイントを言葉にして伝えます。
3.取り組む意味を伝える
そしてもう一つが、その取り組みを行う意味を伝えることです。
SNS発信をすることで、医院にとってどんな意味があるのか。患者さんにとってどんな意味があるのか。そして、そこで働くスタッフ自身にとってどんな意味があるのか。
そこまで伝えることが大切だ、という考え方です。
この3つは、非常に大事な視点だと思いました。
そもそも動き出せていない会社にも使える
和仁先生が紹介されていたのは、「スタッフは発信しているものの、医院のイメージや目的とは少し違う投稿になっている」という段階でのお話です。
院長としては修正したい。しかし、細かく口を出しすぎると、スタッフのやる気を損なってしまうかもしれない。
そうした場面での「任せ方」がテーマでした。
一方、私が経営改善の現場でよく見るのは、その一歩手前です。
つまり、そもそも取り組みが始まっていない。
そして経営者自身も、「何をやってもらえばいいのか」「どう伝えればいいのか」を言葉にできていない。
そんなケースです。
状況は少し違いますが、こうした場合にも、
・お手本を示す
・見るポイントを伝える
・取り組む意味を伝える
という3つの考え方は使えると思います。
では、自分自身がSNSに詳しくない経営者の場合、具体的にどうすればいいのでしょうか。
お手本は、自分で作らなくていい
まず「お手本を示す」といっても、経営者自身が素晴らしいSNS投稿を作る必要はありません。
そもそも経営者はSNSの専門家ではありませんから、「自分がお手本を見せなければ」と考える必要はないと思います。
たとえば他の薬局のSNSを見ていて、「この薬局の発信、いいな」と思うアカウントがあったとします。
多くの人に見られている。コメントがついている。同業者だけではなく、地域の方からも反応がある。
そんなアカウントをみて、「この薬局のSNSは良いな!」と思ったところがあれば、「うちも、こんな発信ができるといいね」と従業員さんに見てもらえば良いと思うんです。
それだけでも十分、お手本になります。
大事なのは、ゼロから自分で正解を作ることではなく、目指したいイメージを共有することです。
「なぜこれがいいのか」まで伝える
ただし、参考になるSNSを見せて、「こんな感じでよろしく」だけでは、実際に発信をするのは大変だと思います。もう少し意図を伝えたいですね。
次のステップは、「自分(経営者)はなぜ、この会社のSNS(発信内容)がいいと思ったのか」を伝えることです。
たとえば、
・「あの薬局は、うちとお客さんの層が似ているよね」
・「派手な投稿ではないけれど、患者さんに役立つ情報を丁寧に発信しているところが、うちの考え方に近い」
・「難しい内容を分かりやすく説明しているところがいいと思った」
といった具合です。
私自身もそうですが、「面白いキャラクターで注目を集めるより、派手さはなくても役に立つ情報をきちんと伝えたい」と考える経営者もいると思います。
そうであれば、その考えを従業員さんに伝えると良いと思います。
すると、「社長は、こういう発信をしてほしいと思っているんだな」という判断基準が共有されていきます。
「このアカウントを真似して」ではなく、「このアカウントの、ここがいいと思っている」まで伝えることが大切なのだと思います。
「何のためにやるのか」を共有する
そして最後が、取り組む意味を伝えることです。
SNSをやること自体が目的ではありません。
SNSを通じて、患者さんやお客さんにどうなってほしいのか。薬局にとって、どんないい変化につなげたいのか。そこで働くスタッフや薬剤師にとって、どんな意味があるのか。
そこを経営者自身の言葉で伝えます。
たとえば、
・「地域の方に、困ったときに思い出してもらえる薬局になりたい」
・「薬を受け取るだけではなく、健康について相談できる場所だということを知ってもらいたい」
・「普段スタッフが患者さんに伝えている役立つ情報を、もっと多くの方にも届けたい」
など、その会社なりの目的があるはずです。
SNSのやり方に詳しくなくても、「なぜ会社としてこれをやりたいのか」は、経営者だからこそ伝えられることです。
任せることと、任せきりにすることは違う
SNSをやろうと決めて、「じゃあ、あとはよろしく」と従業員に任せても、なかなかうまく進まないことがあります。
特に、会社として初めて取り組むことならなおさらです。
最初のうちは、
・「こういうことをやりたい」
・「こういう発信がいいと思っている」
・「これはうちらしくないと思う」
と、経営者も一緒に考えながら進めた方がいいでしょう。
ある程度方向性が共有され、従業員自身で判断できるようになってきたら、少しずつ任せる範囲を広げていけばいい。
最初から全部任せるのではなく、軌道に乗るまでは一緒に進める。
これも、新しい取り組みを定着させるうえでは大切なことだと思います。
「任せたのに進まない」と感じたら
SNSに限らず、「新しい取り組みを任せたけれど、なかなか進まない」と感じたときには、一度この3つを確認してみてください。
・目指すお手本を示しているか
・どこを見て判断すればいいかを伝えているか
・なぜ取り組むのかを共有しているか
もしかすると、従業員がやる気を出していないのではなく、何を目指して、何を基準に動けばいいのかが分からず、手が止まっているだけかもしれません。
経営者自身がその分野の専門家である必要はありません。
参考になるお手本を一緒に探し、「なぜこれがいいと思ったのか」「会社として何を実現したいのか」を伝える。
そこまでできれば、従業員もずっと動きやすくなるのではないでしょうか。
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